近年、AI技術の発展により、誰でも簡単に高精度の動画を偽造できる「Deep Fake(ディープフェイク)」が注目を集めています。驚くほど自然に顔や声を置き換えられるため、悪用による詐欺や名誉毀損などが社会問題になり、あまり良い印象を持っていない方が多いようです。
しかし、Deep Fakeはもともとエンタメとして使われていた技術でした。
適切な使い方を心がければクリエイティブの可能性を大きく広げてくれます。
この記事では、Deep Fakeの概要や危険性・見分け方を解説します。
Deep Fakeを手軽に使えるおすすめアプリも紹介するので、Deep Fakeに興味がある方はぜひ参考にしてください。
Deep Fakeとは
Deep Fakeとは、人工知能技術を使って、あたかも本人のように見える・聞こえる偽の動画や音声を作り出すことです。
Deep Fakeは、Deep Learning(深層学習)とFake(偽物)を組み合わせた造語で、AIを活用した合成技術という意味を持っています。しかし、「Fake」というネガティブなワードを用いているため、悪意のある利用に対して呼ばれる場合もあります。
Deep Fakeに使われている技術
Deep Fakeでは、主に敵対的生成ネットワーク(GANs)と呼ばれる人工知能技術が使用されています。
GANsは、「生成ネットワーク」と「識別ネットワーク」という2つのニューラルネットワークが競い合いを繰り返すことで精度を向上させていく仕組みです。具体的には、生成ネットワークは偽の画像を作成し、識別ネットワークはその画像が本物か偽物かを判別します。
ニューラルネットワークは、Deep Fakeにおいて画像や動画の生成と識別を行うための基盤となる技術です。
ニューラルネットワークの仕組みについては、以下の記事で解説しています。
身近な具体例を挙げて初心者向けに分かりやすく解説しているので、ニューラルネットワークについて知りたい方もぜひご一読ください。
Deep Fakeのおすすめアプリ7選
Deep Fakeは、クリエイティブな表現に使えば非常に魅力的なツールです。
以下では、オリジナルDeep Fakeコンテンツを制作できるおすすめアプリを7選ご紹介します。まずは、各アプリの特徴を簡易にまとめた一覧からご覧ください。
アプリ名 | 主な機能 | 価格 | 日本語対応 |
Reface |
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無料(アプリ内課金あり) | ー |
SelfieU |
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無料(アプリ内課金あり) | ー |
Xpression avatar |
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一部無料(アプリ内課金あり) | 〇 |
FaceApp |
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一部無料(アプリ内課金あり) | 〇 |
Avatarify |
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無料(アプリ内課金あり) | ー |
Mivo |
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無料(アプリ内課金あり) | 〇 |
FaceHub |
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一部無料(多くの機能が有料) | 〇 |
①Reface
Refaceは、映画の主人公の顔に自分自身の顔を合成できる人気のDeep Fakeアプリです。
Refaceは手持ちの写真から顔を認識し、さまざまな動画にシームレスに合成できるため、「憧れの俳優やキャラクターになった気分を楽しみたい」「お気に入りの映画に登場してみたい」という夢も手軽に実現できます。
なお、無料版では利用できる機能に制限があるため、より本格的に楽しむには有料プランの利用が推奨されます。ただし、無料版から課金を促す仕組みが含まれているため、慎重に操作を進めてください。
②SelfyzAI
SelfyzAIは、Deep Fakeのダンス動画を簡単に作れるクリエイティブなAIアプリです。
アニメ風の写真や動画を簡単に作成できる魅力的なフィルターが豊富で、ファッションやメイク、ヘアスタイルの変更も自由自在。マッスル風やスリミングなどのボディメイクやベビーフェイス風、歯を白く見せる機能なども楽しめます。
なお、アプリ内での課金システムが分かりにくいため、操作時には十分に確認して必要以上の支出にならないよう気をつけましょう。
③Xpression avatar
Xpression avatarは、Deep Fakeを楽しめるAIアバター作成アプリです。
手持ちの写真をアップするだけで、AIがさまざまなスタイルのアバターを作成してくれます。
アバターは、顔の表情や頭の動きに合わせてリアルタイムで動くので、好きな言葉をおしゃべりさせることも可能。ワンタッチの簡単操作で、アバターが笑ったり歌ったりするなど、楽しい動きも体験できます。
なお、ユーザーの年齢や地域によって、アプリの使用方法や扱いに違いがあるため慎重に確認しましょう。
④FaceApp
FaceAppは、ワンタップで繋ぎ目のないリアルなDeep Fakeを楽しめるアプリです。
セルフィーやポートレートに、自然なメイクアップやヘアスタイル、性別変更などの多彩なエフェクトを簡単に適用できるため、体型変更も自由自在に対応できます。ビフォー&アフターを比較しながら仕上がりを確認でき、すぐにSNSに投稿できるのも魅力です。
10億以上のダウンロードを誇る人気アプリですが、利用前にはプライバシーポリシーやユーザー規約をよく確認して慎重に使いましょう。
⑤Avatarify
Avatarifyは、手軽な操作で瞬時にDeep Fakeを作成できるアプリです。
有名人の写真をアップロードしてショート動画を撮影すると、いきいきとした顔の表情やしぐさが写真に反映されます。お気に入りのキャラクターやアート作品を動かすことも可能で、ペットや赤ちゃんとの会話まで表現できます。
なお、試用期間後の解約が複雑なので、操作を進める際にはあらかじめ解約方法について確認しておきましょう。
⑥Mivo
Mivoは、顔写真をワンタッチで動画に変換できるDeep Fakeアプリです。
自分の顔を有名人や動物、赤ちゃんなどに簡単にはめ込むことができ、さらに音楽付きの豊富なビデオテンプレートも使えます。写真をアップロードするだけの手軽なビデオ編集も魅力で、さらに顔データを保存しないため、プライバシーが気になる方にもおすすめです。
ただし、無料版では広告の表示が多く、広告を非表示にするためにはプレミアムバージョンへの登録が必要となるのであらかじめ把握しておきましょう。
⑦FaceHub
FaceHubは、ビデオChatやスクリーン共有など、対面コミュニケーションにおすすめのアプリです。AIを活用したDeep Fake機能を搭載しているので、友人や有名人の顔に置き換えてオリジナルビデオを作成することも可能です。
ただし、マニュアルなどの情報が非常に少なく、ほとんどの機能が有料となっているため、利用時には十分な情報収集を行ってたら利用してください。
近年は、AIを使った株価予測アプリも注目されています。
株式に詳しくない方でも手軽に資産運用できる画期的なツールです。
Deep Fakeの使い方
Deep Fakeの使い方は利用するツールによって異なりますが、以下ではおすすめアプリで紹介した「Reface」の使い方をお伝えしましょう。
上記のYouTube動画でもDeep Fakeの使い方を実際の操作と合わせて解説しているので、解説文と照らし合わせてご視聴ください。
Deep Fakeを使う手順
それでは、Deep Fakeの使い方をステップごとに解説しましょう。
- 「Reface: リフェイス – アプリ顔交換」をダウンロード・インストール
- Refaceアプリを起動
- 顔交換したい動画を選択
- 動画の右上にあるアイコンをタップ
- 顔交換したい顔を選択
- アプリが顔の合成処理を実施
- 完成した動画をダウンロード、もしくはSNSで共有
これで、Refaceを使ったDeep Fakeが完成しました。
ダウンロードはApp Store、もしくはGoogle Playから行ってください。
Deep Fake作成時には、顔全体がはっきり写っている正面から撮影した写真を使用するのがポイントです。
なお、動画の長さや端末の性能によって処理時間が変わる場合があります。
サーバーの混雑やアプリの不具合により処理時間が長くなるケースもあるため、そのような場合はアプリの再起動やアップデートを試してみてください。
Deep Fakeの危険性
Deep Fakeといえば、やはり「危険性」というキーワードと切り離せないでしょう。
以下では、Deep Fakeの具体的な危険性について解説します。
Deep Fakeの危険性①なりすまし
Deep Fakeの危険性としては、やはり「なりすまし」が挙げられます。
Deep Fakeは性能が日進月歩で進化しているため、一見しただけでは判断できないほど精巧に人物になりすますことが可能です。
このなりすましを悪用した詐欺行為は後を絶たず、著名人や社会的権威のある人物の肖像をかたった詐欺が横行し、音声を使ったフィッシング詐欺なども蔓延しています。
Deep Fakeの危険性②プロパガンダ
Deep Fakeの危険性にはプロパガンダも挙げられます。
これは上記のなりすましが派生した手法ですが、政治的に活用されることにターゲットを絞った危険性の例です。具体的には、選挙時の虚偽動画の拡散、著名人の音声や顔を偽造した特定政党の宣伝などが挙げられます。
Deep Fakeの危険性③フェイクポルノ
Deep Fakeの危険性にはフェイクポルノも挙げられます。
これも著名人の顔や音声を合成した被害で、テイラー・スウィフトやエマ・ワトソンなど、多くの有名人が被害にあっています。
著名人だけではなく、一般の方でもDeep Fakeによる偽造動画がSNSで拡散されるなど、その影響は深刻かつ広範囲といえるでしょう。
Deep Fakeの法規制
Deep Fakeは、当初エンターテイメント業界で活用されていましたが、近年、その技術が悪用されるケースが深刻化しています。政治家の演説の捏造や、CEOの声を偽装した詐欺など、社会の秩序を乱し、犯罪に利用される事例が後を絶ちません。
各国の法規制
このような状況を受け、欧州議会ではAI法が可決され、アメリカでも法規制の強化など、Deep Fakeに対する規制強化の動きが加速しています。以下では、各国の主なDeep Fakeの法規制について表にまとめてみました。
国・地域 | 関連法規 | 概要 | 施行年度 |
欧州連合 | AI法 |
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2024年 |
アメリカ | ディープフェイク関連法案 |
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2019年 |
中国 | サイバースペース管理局の規制 |
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2019年 |
オーストラリア | フェイクポルノ規制法 |
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2024年 |
イギリス | 検討中 |
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ー |
このように、各国は、近年Deep Fakeによる虚偽情報の拡散を防ぐとともに、信頼できる情報環境を構築するために各種法整備や規制の導入に取り組みはじめました。
Deep Fake問題の本質
Deep Fake技術の急速な発展は、デジタル化社会の広がりを背景に、世界的混乱を招きやすいと危惧する見識者の声も見られます。しかし、Deep Fakeの問題は技術的な問題というよりも、むしろ人々が情報やニュースをどれだけ信頼できるかという、より根源的な問題でもあるのです。
ネットを中心とした真偽不明な情報が氾濫する社会において重要なのは、利用者一人ひとりが真実を見極める能力を養うことに帰結しているでしょう。
生成AIセミナー|ProSkilll
ProSkilllの生成AIセミナーは、プライバシーや個人情報など、Deep Fakeをはじめとした生成AIがもたらすリスクについて学べるセミナーです。
適切なプロンプト入力方法や生成AIを使ったアプリケーション作成の流れも学べるため、Deep Fakeのアプリを安心して活用したい方はぜひ受講をご検討ください。
受講期間 | 2日 |
受講形式 |
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受講料金 | 各38,500円 |
Deep Fakeの見分け方
Deep Fakeの脅威が増している今、映像の真偽を見極める力はとても大切です。
Deep Fakeの見分け方①情報ソースを確認
Deep Fakeの見分け方としては、まず情報ソースを確認しましょう。
公式メディアのウェブサイト、または信頼できるニュースで同じ情報が報じられているかをチェックすることが重要です。また、動画に関連する背景情報が十分あるかどうかも確認しておいてください。
Deep Fakeの見分け方②映像自体を注視
Deep Fakeを見分ける際は、映像の細かい部分にも注目してみてください。
特に、人物の目や口の動きが不自然ではないかを観察するのがポイントです。たとえば、不自然な瞬きや口の動きと声の不適合、または急な映像の質の変化があればDeep Fakeの可能性が高いでしょう。
Deep Fakeの見分け方③AI検知ツールの利用
Deep Fakeの見分け方としては、テクノロジーを活用するのも一つの方法です。
MicrosoftのVideo AuthenticatorやDeepbrain AIのツールなど、Deep Fakeを検出できる便利なツールがあります。これらはAIを活用して映像を分析するため、映像内の細かな矛盾や不自然な部分を高い精度で検出できます。
上記でお伝えした方法は、一つの方法だけに頼らず、複数の視点からチェックすることが重要です。常に批判的な目を持って、目の前の情報をそのまま信じない姿勢が、デジタル社会を生き抜くうえで最も重要であるといえるでしょう。
Deep Fakeについてまとめ
Deep Fakeは、クリエイティブな可能性を広げるツールとして注目されています。
しかし近年では、この技術が悪用され、犯罪行為や扇動といった社会的な問題を引き起こすケースが増えてきました。こうした状況を改善するためには、私たちがDeep Fakeを正しく活用し、同時に虚偽を見抜く力を身につけることが重要です。
ProSkilllの生成AIセミナーに参加すると、生成AIの適切な使い方、そのリスクについて学べます。
生成AIが私たちの生活に不可欠な存在になりつつある今、生成AIを社会の役に立つツールとして活用するスキルを身につけることが重要です。