社会にAIの活用が広まる中で、教員の負担軽減や個別の学習に応用すべく、教育現場での活用も期待されています。しかし、AIで教育の何ができて、どんな課題を解決できるのか知らない人も多いでしょう。そこで、実際の事例やメリットを紹介し、具体的な導入手順を解説します。
教育にAIを導入することで解決できる課題
教育現場ではさまざまな問題が取り沙汰されています。そこでAIは、教育分野で多くの課題を解決することが期待されています。
AIにより教師の業務を半自動化することができる
学校教育にとって教師の負担の増大は大きな課題です。そこで、AIの導入は、教師の負担を軽減することができます。
具体的には、AIを活用することで、教師の日々の雑務やルーチンワークを半自動化することができます。例えば、画像認識による出席確認やチャットボットによるQ&Aの自動化、自動採点機能によるテストの採点などです。
高度な学習支援では、AI活用の進路アドバイスや学習進行状況をモニタリングする方法としても使えます。特に、学習支援がAIにより自動化されるだけで、個別の生徒への対策や情報収集・対応案の作成といった手間が省けるのです。
教育で使うデータの分析とその活用がしやすくなる
教育では、テスト結果や生徒の成績など、個別のデータを集めて分析することがよくあります。しかし、データ分析は教師の専門外であることが多く、正確な分析手法を運用することが難しいのがネックです。そこで、AIはデータを自動的に分析して、教育カリキュラムの効果を定量的に評価することができます。
これまでは経験豊富な教師が感覚的で、属人的に行っていた作業を、新任教師や情報処理に疎い教師でも可能です。「いまからデータ活用をすぐに実施したい」という悩みや課題に対して、AIが解決する助けになります。
教育にAIを導入するメリット・デメリット
AIを教育に導入する場合、メリットとデメリットの両方があります。教育現場では、学校によっても状況が違うため、このメリット・デメリットを見極めて、導入を判断する必要があります。
AI導入により教師の負担軽減が可能となる
まず、生徒の成績にあわせてパーソナライズした学び方を提案できるのがメリットの1つ目です。AIは生徒の間違えた問題、解答にかかった時間、学習履歴、成績などのデータを分析し、それに基づいて出題を変えたり、授業内容や学習する順番をアレンジします。そのため、学校や地域といった格差、教員不足などに左右されることなく、誰もが適切なレベルの教育をいつでも受けられるようになります。
また、AIの画像認識技術の進化で、先生の感触や生徒へのアンケートでしか測ることができなかった授業や教材の満足度が測定できるます。客観的なデータに基づく授業改善・教材評価が今後可能になることは大きなメリットです。これらに加えて、教員の負担軽減やコア業務への集中(雑務からの解放)、コスト軽減など、さまざまなメリットが考えられます。
導入コストや情報の管理に課題がある
一方、AIを教育に導入するデメリットもあります。まず、教員側はAIに詳しいわけではないため、専門的な導入や活動は外部だよりになりがちです。通信やネットワークなどの技術もAIは活用しているため、校内の設備も充実させる必要があり、設備導入コストや教員研修などの負担が別途、学校・教員全体に対して生じます。
また、AIが学習をサポートして生徒が自主的に考えることを放棄しないような工夫がどうしても必要になることもデメリットの1つです。AIを活用すれば教師の負担も減らし、学習サポートもリアルタイムで行えますが、直接的に生徒へのアドバイス内容をチェックしていないため、間違ったサポートが行われた場合にはすぐに教師が気づかないことです。
他にもデメリットとして、セキュリティの問題や個人情報の扱いなどが挙げられます。活用する側が配慮して導入を進める必要があるため、情報管理の際には特に気をつけましょう。
教育現場にAIを導入した成功事例
ここでは、教育現場にAIを導入した代表的なラーニング手法や記述式のAI採点など成功事例を3つ紹介します。
株式会社Nextremer
株式会社Nextremerは、ミミミラボ(石川県金沢市)の地域を中心にAI体験施設のメンターと連携し、子どもたちがAI体験学習の場としてのワークショップの定期開催などを行っています。その中に、AIチャットボット「A.I.Talk」があります。
「A.I.Talk」は、例えば、学生との一対一の対話を通じて、学習の進捗管理や理解度の確認、質問への回答などが得意です。学生の興味や理解度に応じて最適な学習内容を提供するラーニングも可能です。
また、データを活用するサービスも提供しており、教育データのラベリングや分析をすることで、精度の高い教育支援をしています。教育現場における教師の負担軽減や学生の学習効果の向上などを実現することが期待できます。
【参考URL】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000017379.html
COMPASS inc.
埼玉県の戸田市教育委員会(公立学校)では、タブレットを活用してCOMPASS inc.のアダプティブラーニングを実施しています。アダプティブラーニングとは、学習者のレベルに応じて、カリキュラムや教材、課題を自動的に調整し、最適な学習環境を提供する方法のことです。
「Qubena」というアプリを通じて、AIは学生の学習パターンを理解し、それぞれの学生に合わせた問題を再出題します。学生は自分のペースで学ぶことができ、理解度に応じて学習内容が調整されるのが特徴です。
学校法人高宮学園 代々木ゼミナール
教育現場にAIを導入した成功事例として近年受験でも注目されている記述式に対する採点を代々木ゼミナールがAIで自動化した成功例です。
業界で初めての導入として話題となり、理研AIPとの共同研究で技術開発を進めたAIです。現代文トレーニングの教材として、記述式の答案を自動作成するための活用が可能です。
【参考URL】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000072274.html
教育現場にAIを導入する手順
実際にAIを導入するためには、具体的な手順を知る必要があります。ここでは、AIプロジェクト推進サービスについて導入手順を以下に紹介します。
- 手順1.ヒアリングと提案による課題の設定
- 手順2.日程と計画に必要な項目(コンセプト、人選、費用、納期、共有内容など)の決定
- 手順3.AIプロジェクトの実行・公開
- 手順4.教育現場での問題解決やデータのフィードバック
AIプロジェクト推進サービスを利用する場合は、まずヒアリングで教育現場のAI導入を相談します。具体的に、現状どのような問題があり、課題を解決する必要があるのかをサービス提供側に説明します。それに応じて、フォローする内容をサービス提供側が提案する流れです。
次に、AIを導入するまでの計画を立てます。通常は、教育関連の業務に適したAIを導入するため、教育計画のゴールやコンセプト、業務範囲を絞って、それに応じた人選、費用、納期を決めます。このとき、データの活用やAIの学習なども行われます。AIにデータが必要な理由は、基本的にAIの処理を膨大なデータの機会学習やディープランニングによって可能にしているためです。
以上の準備が整ったら、AIプロジェクトを実際に導入した現場の運用を開始します。例えば、教育サービスにAIを組み込んで、ラーニングや音声認識、業務補助(データ収集・解析、自動採点)などに活用します。最後に、AIの運用で得られた情報を踏まえて、フォローやサポートを受けながら、活用を進めていきます。
- AI人材を育成したい方→企業向けDX・AI人材育成サービス
- AIの開発を発注したい方→AI技術コンサルティング 受託開発/PoCサービス
- AIプロジェクトを任されているがどうしていいかわからない方→AIプロジェクト推進サービス
こちらから自社に合うサービスをお選びください。
教育にAIを導入することについてまとめ
教育へのAI導入では、実際にできることを事例から把握して、メリットを活かすような使い方がおすすめです。そのためには、教育現場での課題を明確にします。AI導入で解決するために、それに適したAIのサービスを選択することが求められるでしょう。
