人口減少や採用難が進む現代社会。企業が成長を続けるには「今いる社員の力をどう伸ばすか」が重要になっています。そこで注目されているのが、社会人が学び直す仕組みであるリカレント教育です。
この記事では、リカレント教育について、文部科学省の定義やメリット、課題点と国の対策など多彩な視点から解説します。
無料で受けられる大学一覧、おすすめの学習サービスもご紹介するので「DXを推進したい」「社員教育を強化したい」という企業の担当者の方もぜひ参考にしてください。
リカレント教育とは?
リカレント教育とは、社会に出た後も必要に応じて学び直しを続ける仕組みのことです。
「リカレント(recurrent)」は「繰り返す」という意味を持ち、就労と学習を行き来しながら自分の可能性を広げていく考え方を指します。
リカレント教育が広まったのは1970年代、OECD(経済協力開発機構)の提唱がきっかけでした。そして現代においても、ITやAIの飛躍的な進化を背景に、「スキルを継続的にアップデートする」必要性は一層高まっています。
日本では、経済産業省が推進する「リスキリング」と並び、文部科学省もリカレント教育の強化を打ち出しました。
文部科学省の定義
文部科学省はリカレント教育を「社会に出た後の継続的な学び」と定義しています。
「自分に必要な学び」「時代のニーズに即した能力・スキル」「職業とは直接結びつかない技術や教養」を社会に出た後も身につけること。またその社会的なシステム。
引用元:マナパス|文科省
ここで押さえておきたいのは、仕事に直結するスキルだけでなく、教養や幅広い知識も含むという点です。また、個人が学び直しを続けられるようにする社会全体の仕組み(制度・環境) もリカレント教育の一部とされています。
つまり、リカレント教育とは「個人の学び直し」と「それを支える社会の仕組み」の両方を指す概念なのです。
リスキリング・生涯教育との違い
リカレント教育と混同されやすいのが「リスキリング」と「生涯学習」です。ここでは、これらの言葉との違いを解説します。
リスキリングとの違い
リスキリングは、企業がDX推進などを目的に従業員へ行う「再教育」を指すのに対し、リカレント教育は個人が主体となって学び直すことを指します。つまり、学びを主導する存在と、その目的が大きく異なります。
生涯学習との違い
生涯学習とは、趣味・教養・健康づくりなど、人生をより豊かにするための学びのことです。リカレント教育も教養的な側面を持ちますが、働き続けるための知識やスキルの更新という目的が加わる点で異なります。
リカレント教育やリスキリングに興味があるものの、「まず何から取り組んでいいかわからない」「DXの進め方が見えてこない」という方や企業様には、DX研修・人材育成プログラムがおすすめです。
- 最新ビジネススキルを学べる60以上の学習コンテンツ・定額受け放題
- DXスキルチェックテストで個々の企業・従業員に合った研修を提案
上記のように、ニーズに合わせて柔軟な学習方法を提供しています。
リスキリングについては、以下の記事で解説しています。企業のリスキリング事例もお伝えしているので、詳しい取り組み状況を知りたい方もぜひご一読ください。
リカレント教育が注目される背景

近年、リカレント教育が注目を集めているのは、「一人ひとりの生き方」と「社会の形」という変化が背景にあります。
- 長期化するキャリア
- 「Society 5.0」への備え
- 深刻化する人材不足
①長期化するキャリア
かつての人生は「教育・仕事・引退」の3ステージが主流でした。
しかし、人生100年時代を迎えた現在、働く期間が長期化しています。そのような中で活躍し続けるためには、手にしたスキルを常にアップデートしていく努力が必要です。
②「Society 5.0」への備え
また、テクノロジーで社会の課題を解決する「Society 5.0」が目前に迫った今、人間に求められる役割もこれまでと大きく変わるとされています。例えば、AIを使いこなす能力やデータに基づいた思考力の重要度は、今後さらに高まっていくでしょう。
③深刻化する人材不足
リカレント教育が注目される背景の一つは、「人材不足」の深刻化です。
現在、「SAP 2027年問題」を控え、IT人材が大幅に不足すると予測されています。少子高齢化の加速、人口減少に加え、さらに専門人材の不足はDX推進の足かせとなっています。
こうした時代の変化と未来を見据え、働きながらスキルを更新し、現代社会に適応し続けるための「リカレント教育」が注目を集めているのです。
物流業界でも人手不足は深刻化しています。以下の記事で、物流業界の人手不足の状況、および打開策について解説しているので、各業界の人材不足の現状をぜひご確認ください。
リカレント教育で得られるメリット

リカレント教育は、企業と個人の双方に価値をもたらします。ここでは、それぞれの立場で得られる主なメリットをお伝えしましょう。
企業が得られるメリット
まずは、企業が得られるメリットを見てみます。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 従業員満足度向上 | 成長したという実感が生まれ、仕事への意欲や会社への信頼が高まる |
| 人材流出の防止 | 学びを支援する姿勢が従業員の安心感につながり、離職を抑えられる |
| 生産性向上 | スキル向上で業務効率が上がり、無駄の削減や改善が進む |
個人が得られるメリット
次に、学ぶ側である個人のメリットです。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| キャリアの広がり | 専門性が高まり、選べる働き方や役割が増える |
| 視野の深化 | 異業種・異世代との学びで新しい考え方に触れられる |
| 社会とのつながり強化 | 学びを仕事や地域で活かせ、貢献実感が得られる |
このように、リカレント教育は企業の競争力と個人のキャリア形成を同時に高められる取り組みなのです。
リカレント教育の課題と国の対策

リカレント教育の必要性は高まり、現代ビジネスで注目されている反面、実際にリカレント教育に取り組む社会人はまだ少ないのが現状です。ここでは、リカレント教育が抱える課題と国の対策についてお伝えしましょう。
リカレント教育が抱える主な課題
まずは、リカレント教育が抱える主な課題を見てみましょう。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 費用負担 | デジタル人材育成の研修は学費が高めで、コスト面での負担が大きい |
| 時間の確保 | 仕事をしながらの学習時間の確保、または家事・育児との両立が難しい |
| 情報不足 | リカレント教育を受けられる場所・教育機関、学習内容が分かりにくい |
| プログラム不足 | 実践的に学べるリカレント教育機関、オンライン対応の講座が少ない |
| 企業の支援不足 | リカレント教育を推進するための休暇制度、評価制度が整っていない |
国の取り組み
社会人がリカレント教育に取り組みやすくするため、国は次のような施策を進めています。
| 担当省庁 | 取り組み内容 |
|---|---|
| 文部科学省 | 大学・専門学校のプログラム開発、地域プラットフォーム整備 |
| 厚生労働省 | 教育訓練給付金、人材開発支援助成金 |
| 経済産業省 | リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 |
まずはこうした情報収集からスタートし、コスト面や時間面などの負担を踏まえたうえで、無理のないリカレント教育を進めていきましょう。
2026年度版|リカレント教育に無料対応している大学

近年は、社会人向けに無料でリカレント教育を提供している大学が見られます。
ここでは、2026年の最新情報をもとに、無料で参加できる静岡大学のリカレント教育をご紹介しましょう。
静岡大学|インテンシブ・リベラルアーツ・プログラム
静岡大学が2026年3月1日に開催する「インテンシブ・リベラルアーツ・プログラム」は、社会人が無料で参加できる本格的なリカレント教育です。
生成AI、サステナビリティ、地域経済、ジェンダーといった現代の重要テーマを、人文・社会科学の視点から深く理解することを目的としています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年3月1日(日)11:00〜18:30 |
| 会場 | 静鉄コワーキングスペース「ODEN」(静岡市葵区鷹匠2-8-10) |
| アクセス | 新静岡駅から徒歩約3分、JR静岡駅から徒歩約10分 |
| 受講料 | 無料 |
| 定員 | 30名 |
| 主なテーマ | 生成AI、循環経済、地域経済、ジェンダー、教養の学び方 |
| 講師 | 静岡大学の教授・講師陣(法学・工学・社会科学など) |
| 申込方法 | 申込フォームに必要情報を入力 |
| 申込締切 | 2026年2月26日(木) |
| 問い合わせ先 | 静岡大学 地域創造教育センター |
リカレント教育におすすめの学習サービス
静岡大学のように、社会人が無料で参加できるリカレント教育がある一方、こうした無料講座はまだまだ数が限られています。有料のリカレント教育であっても、「大学が近くにない」「日程が合わない」といった理由で参加が難しい方もいるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、場所や時間に縛られずリカレント教育が受けられるDX研修・人材育成プログラムです。当講座では、独自のDXレベルチェックテストで自分のスキル状況を把握し、必要な知識を効率良く学べます。提供するカリキュラムは、
- DXリテラシー・ビジネス基礎スキル
- AI(プログラミング、G検定など)
- データ分析(データサイエンス育成など)
- RPA(Power Automateによる自動化など)
- デザイン(Illustrator、Photoshopなど)
- CAD(AutoCAD、Autodesk Fusionなど)
のように、企業のDX推進に必要な実務スキルを幅広く学べます。ハンズオン形式の研修や定額受け放題プラン、助成金の活用など、学び直しを継続しやすい仕組みが整っている点も魅力です。
リカレント教育で利用できる助成金

リカレント教育を受けた場合、特定要件を満たしていれば国の助成金を受けられます。ここでは、リカレント教育で利用できる助成金を2つご紹介します。
- 教育訓練給付金
- 人材開発支援助成金
教育訓練給付金
教育訓練給付金は、厚生労働省が「指定した講座」を受講・修了した際、受講費用の一部を国が補助する制度です。対象となるのは、雇用保険に一定期間加入しているなど、受給要件を満たす人で、給付金の種類は3つあり、講座のレベルや目的によって支給率が変わります。
| 給付区分 | 支給率・上限額 | 追加給付(条件付き) |
|---|---|---|
| 専門実践教育訓練 | 受講費の50%(上限40万円/年) |
|
| 特定一般教育訓練 | 受講費の40%(上限20万円) | 資格取得+1年以内の就職で50%(上限25万円) |
| 一般教育訓練 | 受講費の20%(上限10万円) | ― |
現在、教育訓練給付金の対象となる講座は、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で確認できます。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、厚生労働省が運営する企業向けの助成制度です。
企業が従業員に専門的な知識や技能を身につけさせるために訓練を実施した場合、訓練にかかった費用や、訓練中に支払う賃金の一部を国が補助します。対象となるのは、雇用保険に加入している事業主と、その従業員です。
| 訓練区分 | 経費助成率 | 賃金助成額 | OJT実施助成額 |
|---|---|---|---|
| 人材育成訓練(OFF-JT 10時間以上) | 30%(45%) | 400円(800円) | ― |
| 認定実習併用職業訓練(OJT+OFF-JT) | 30%(45%) | 400円(800円) | 11万円(20万円) |
| 有期実習型訓練(OJT+OFF-JT) | 75% | 400円(800円) | 9万円(10万円) |
なお、上記の()は中小企業の助成率、助成額です。また、人材育成訓練は10時間以上のOFF-JTによる訓練が対象となります。
参照:人材開発支援助成金
リカレント教育についてまとめ
リカレント教育は、変化の激しい現代社会で誰もが継続して学び続けることを目的とした新しい教育の考え方です。
現在、無料でリカレント教育を受けられる大学は少ないので、大学主催の有料のリカレント教育、または民間のリカレント教育も視野に入れると良いでしょう。助成金を利用するとお得にリカレント教育を受けられますので、支給要件を確認しながらぜひ活用してみてください。
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