毎月繰り返される集計や申請処理の中には、デジタルツールで効率化できる業務が少なくありません。こうした改善の余地に気づき、そこから新たな価値を生み出せるかどうかは、DXリテラシーの有無に左右されます。
本記事では、経済産業省が策定した「DXリテラシー標準」に基づき、DXリテラシーをわかりやすく解説します。DXリテラシー向上に役立つ資格も紹介するので、DX人材を育成したい企業様はぜひ参考にしてください。
DXリテラシーとは?

DXリテラシーとは、企業や組織がDXを実現するために必要な基礎知識・スキルのことです。DXリテラシーを身につけることで、次のような行動ができるようになります。
- AIを使ってエクセル表を自動で作成する
- データをもとにして業務のやり方を見直す
- オンライン施策で新しい顧客層にリーチする
DXリテラシーが社内で当たり前の知識として根づくと、業務効率化を通じて企業全体の競争力も高まっていきます。
経済産業省が示すDXの定義
DX(デジタルトランスフォーメーション)について、経済産業省は次のように定義しています。
デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと。また、そのためにビジネスモデルや企業文化等の変革に取り組むことが重要となる。
引用元:経済産業省「デジタルガバナンスコード 実践の手引き」
DXリテラシーを高める目的は「新価値の創出」
DXリテラシーを高める目的は、DXの定義を実現し、未来を生き抜く企業力を養うことです。
DXとは「紙の書類を電子化する」といったデジタル化にとどまるものではありません。デジタル技術を活用して新たな価値を生み出し、企業のあり方や顧客体験そのものを変えることです。
そのために必要なのが、組織の一人ひとりが持つDXリテラシーです。DXリテラシーの基盤となるAIやITは日々進化するため、継続的な知識のアップデートも重要となります。
DXの学び方に迷ったらプロの指導を受けよう!
DXリテラシーの必要性がわかったところで、「では、実際どう学べばいいの?」と迷う方もいるでしょう。そんなときに役立つのがDX研修・人材育成プログラムです。
こちらのサービスは、事前のスキルチェックから業務での活用までを一貫してサポートしています。さらに、定額制の学び放題プランもあり、お得・柔軟なスキル習得を支援しています。
DXとデジタル化の違いについては、以下の記事で解説しています。表で分かりやすく比較しているので、違いを明確にしたい方もぜひご一読ください。
経済産業省の「DXリテラシー標準(DSS-L)」とは
DXリテラシー標準とは、経済産業省とIPAが策定した「デジタルスキル標準(DSS)」の基盤となる指針です。デジタルスキル標準は企業のDX人材を対象としており、その土台を成すのがDXリテラシー標準です。
- デジタルスキル標準の構成
- DXリテラシー標準の目的
- DX推進スキル標準が示す5つの人材類型
①デジタルスキル標準の構成
デジタルスキル標準は、DXリテラシー標準(DSS-L)、DX推進スキル標準(DSS-P)の2つの指針で構成されています。
- DXリテラシー標準:すべてのビジネスパーソンが身につけるべきDXの基礎スキル
- DX推進スキル標準:DXを専門的に推進する人材が習得すべき役割・スキル
DXリテラシー標準には、非IT職や管理職・経営層も含まれ、DX推進スキル標準はビジネスアーキテクトやデザイナーなど、5つの人材類型が該当します。
DX推進スキル標準の主な改訂内容
デジタルスキル標準は、2022年12月の策定以降、生成AIの普及に合わせて2023年8月にDXリテラシー標準、2024年7月にDX推進スキル標準がそれぞれ見直されました。以下は、DX推進スキル標準の主な改定内容です。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 新技術への向き合い方 |
|
| 生成AIの具体策 |
|
| 共通スキルの見直し |
|
②DXリテラシー標準の目的
DXリテラシー標準の目的は、働き手一人ひとりがDXを自分の責任として捉え、より効果的にDXを推進していくことです。DXリテラシー標準では、この力を身につけるため、以下のような要素を示しています。
- Why:DXが必要となる背景をつかむための知識
- What:DXで用いるデータやデジタル技術の理解・選択
- How:業務でデータや技術を応用する考え方・手法
- Mindset:新しい価値を生み出すための意識・スタンス
わかりやすくいうと、感じた課題(Why)に合うデジタル手段を選び(What)、それをどのように実践に落とし込むかを決める(How)という流れです。そして、その行動を支える土台がMindsetです。
③DX推進スキル標準が示す5つの人材類型
DX推進スキル標準とは、DXリテラシー標準の上位に位置づけられる指針です。DX推進スキル標準では、DXに必要な専門人材の役割とスキルを、以下の5つに区分しています。
- ビジネスアーキテクト:DXの目的を定め、全体をリード
- デザイナー:顧客視点で製品・サービスをデザイン
- データサイエンティスト:データ基盤を整えて分析・活用
- ソフトウェアエンジニア:システムやソフトを設計・実装・運用
- サイバーセキュリティ:DX環境の安全性を確保
DX推進に当たり、まず考えるのが、やはりDX人材の育成・配置です。
この際、上記のようにDX推進時の役割を分けることで、企業は「誰に何を任せるべきか」が明確になり、躓きの少ない、実行しやすいDX化が実現します。
DX化については以下の記事をご参照ください。DX化のメリットやデメリット、始める手順など幅広く解説しています。
DXリテラシーを学ぶメリット
ところで、DXリテラシーが企業・組織に浸透すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、中小企業がDXリテラシーを身に付けるメリットをお伝えしましょう。
- 市場の変化に柔軟に対応できる
- 新しい顧客・市場を獲得できる
- スムーズに意思決定できる
①市場の変化に柔軟に対応できる
近年、ストリーミングサービスをはじめとしたオンライン化の影響で、レコード店・本屋など、これまで身近だったサービスが姿を消していきました。しかし、DXリテラシーがあれば、
- ネットショップを立ち上げて24時間販売を行う
- SNSで商品紹介・キャンペーンを発信する
といったデジタル時代に適した対策ができ、売上を落とすことなく事業を続けられます。
②新しい顧客・市場を獲得できる
インターネットを活用すれば、来店が難しい遠隔地の顧客もターゲットになります。例えば、
- 自社の商品をECサイトで全国に販売
- 海外向けにオンライン出店
することも可能です。なお、JETROの「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、電子商取引(EC)の利用は大企業37.0%、中小企業43.2%という結果でした。
この調査からも、DXリテラシーがあれば売上拡大のチャンスをつかみやすいことが分かります。
引用元:JETRO「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」
③スムーズに意思決定できる
中小企業は現場と経営者の距離が近く、判断までの工程がスムーズです。DXを進める際にも、
- 会議で決めた施策をその場で実行に移せる
- 現場の改善案をすぐに仕組みに反映できる
のように、思い立ったらすぐ実行できます。DXリテラシーがあれば、その判断スピードを生かしながら、変化の波をチャンスに変え、大企業にも負けないDXを実現していけるのです。
企業事例で見るDXリテラシーの効果
続いて、DXリテラシーのメリットを具体的に知るために、実際の企業事例を3つお伝えします。
| 企業名 | 業種 | 主な取り組み | 目標/成果 |
|---|---|---|---|
| ゑびや/EBILAB | 飲食 |
|
|
| マツモトプレシジョン | 製造 |
|
|
| ヒサノ | 物流 |
|
|
このように、DXリテラシーは業種を問わず企業の成長を加速させ、今までになかった新たな視点で業務を改善、競争力の強化を実現しています。
参照:経済産業省「デジタルガバナンスコード 実践の手引き」
DXリテラシー教育を受ける3つのデメリット
DXリテラシーを身に付けるとメリットが多い一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、DXリテラシー教育を受ける3つのデメリットをお伝えしましょう。
- 応用的スキルを学べない
- 実践の場が設けられていない
- スキルアップ後の評価が得にくい
①応用的スキルを学べない
DXリテラシーを対象とした研修の多くは、基礎的な内容のみで完結するケースがほとんどです。例えば、eラーニングによるIT用語の暗記、成功事例や注意点といった情報提供などです。
これは「全社員がDXの共通認識を持つ」というDXリテラシーの概念に則った学習であるため、ある種必然的ではあります。しかし、現場で使えるレベルを目指すなら、次の学習ステップまでカバーしている研修を選択しましょう。
②実践の場が設けられていない
DXリテラシーを学んだ後、学んだスキルを即座に実践できない場合があります。例えば、「自部署では、従来通り紙とExcelで業務を行っている」というようなケースです。
DXリテラシーで得たスキルは、実行・定着までセットにしてこそ効果を発揮します。DXリテラシーの学習が形骸化しないためにも、自ら改善できる業務を見つけ、積極的にアウトプットしましょう。
③スキルアップ後の評価が得にくい
DXリテラシーを身に付けても、その技能習得に対して明確な評価が得にくい、というデメリットもあります。DXリテラシーは「全ビジネスパーソンが共通で持つべき標準スキル」であり、ITパスポート試験やDX検定のような資格の評価は得られません。
この際、DXリテラシーの学習はゴールではなく、あくまで「スタート地点」ととらえましょう。その先に身につけたい専門スキルを見据えることで、DXリテラシーを学ぶ意味が明確になり、学習への意欲も高まります。
DXリテラシー関連の資格
DXリテラシーを身につけるにあたり、スキルを証明できる資格取得も魅力的です。ここでは、DXリテラシーの学習内容に対応する、DXの基礎レベルの資格を4つご紹介しましょう。
| 資格名 | 主な内容 | 受験料 | 受験方式 | 受験日 |
|---|---|---|---|---|
| ITパスポート試験 | ITの基礎知識を証明する国家試験 | 7,500円 | CBT | 随時 |
| DX検定™ | DX関連のIT/ビジネストレンド基礎 | 6,600円 | Web | 年2回 |
| DXアドバイザー検定 | DX推進知識・データ管理・法の理解 | 11,000円 | CBT | 随時 |
| DX基礎能力試験 | DXリテラシー標準に基づく知識 | 5,500円 | IBT | 年3回 |
なお、DXアドバイザー検定は3段階あり、上記は「スペシャリスト」レベルを基にしています。他の「エキスパート」「プロフェッショナル」は現在(2026年2月23日)準備中です。
DXリテラシーを示せる国家資格・ITパスポート試験
ITパスポート試験は、DXリテラシーを客観的に示せる国家資格として各業界で人気が高く、DXリテラシー向上においても相性の良い試験です。さらに学びを深めたい場合は、基本情報技術者試験、応用情報技術者試験などの上位資格へ段階的にステップアップできます。
ITパスポート試験対策セミナーは、短期間で試験範囲を網羅する実践重視の講座です。学習を通じて、ITテクノロジ、ストラテジ、マネジメントなど、実務で使えるスキルも網羅できます。
セミナー名 ITパスポート試験対策セミナー 運営元 GETT Proskill(ゲット プロスキル) 価格(税込) 4,950円〜 開催期間 2日間 受講形式 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング
DXリテラシーの向上におすすめの学習方法

DXリテラシーを学ぶ方法は多岐にわたりますが、どこから取り組むべきか迷う方も少なくありません。DXリテラシーから実務で使えるスキルまで一貫して学びたい場合は、DX研修・人材育成プログラムがおすすめです。
こちらは、DXリテラシーの基礎、データ分析・AI/IT・CAD・プログラミング・デザインツールまで、企業のDX推進に必要なスキルを網羅した総合DX研修サービスです。さらに、
- 事前のスキルチェックで最適な研修を提案
- 受け放題プランでお得&柔軟にスキルアップ
- 助成金活用で研修費が最大75%軽減
など魅力的なサービスも満載です。自社課題に基づくワークショップ形式で学ぶので、「DXリテラシーを即戦力として活用したい」という企業様にもおすすめです。
DXリテラシーの研修で使える助成金
ところで、DXリテラシーを学ぶにあたり、研修費用が気になりませんか?実は、多くのDXリテラシー研修では国の助成金を活用できます。
ここでは、DXリテラシーの研修で使える助成金を紹介します。
- 人材開発支援助成金
- リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
人材開発支援助成金(人への投資促進コース/厚生労働省)
人材開発支援助成金は、DXリテラシーの研修を実施した企業に支給されます。6つのコースがありますが、DXリテラシー関連では「人への投資促進コース」がおすすめです。
| 区分 | 補助率・内容 |
|---|---|
| サブスク型AI学習 | 45%または60% |
| デジタル未経験者向け講習 | 45%または60% |
| 高度デジタル人材向け訓練 | 65%または75% |
| 自発的職業能力開発訓練 | 45% |
| OFF-JT+OJT | 11万円または20万円 |
| 長期教育訓練休暇制度 | 20万円 |
| 備考 | 中小企業・大企業で補助率が異なる |
上記の中でも、DXリテラシーのスキルアップには「サブスク型AI学習」「デジタル未経験者向け講習」が適しています。
参照:人材開発支援助成金「人への投資促進コース」
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は、個人と企業のどちらも利用できる助成金制度です。キャリアプランから研修受講、転職相談まで一貫して対応しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 個人向け補助 |
|
| 企業向け補助(第6次公募) |
|
なお、現在(2026年2月23日)企業向けの第7次公募は未定です。また、補助金制度は随時更新されるので、利用の際には最新の補助金制度の内容を確認しておきましょう。
参照:申請をご検討の事業者、転職をご検討の方 | リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
DXリテラシー測定テストをやってみよう!
最後に、DXリテラシーの測定テストにチャレンジしてみましょう。ここでは、簡易的なチェック問題を2問、解答とともにお伝えします。
DXの実現を正しく説明しているのはどれ?
①電話やFAXを使い続け、デジタルの活用を最小限にすること
②デジタル化でデータを活用し、新しい価値やビジネスを生み出すこと
③書類の押印をなくし、メールを使うだけでDXが完了すること
DXの現状として正しいのはどれ?
①中小企業ではDXの理解が十分で、デジタル化もほぼ完了済み
②多くの企業でDXが完全に浸透し、今後の取り組みは必要ない
③国内では中小企業を中心に、DXの理解やデジタル化が遅れている
DXリテラシーについてまとめ
DXリテラシーは、経済産業省も定義する「DXの土台となるスキル」で、あらゆる業界で重要性が高まっています。独学や資格取得も良いですが、「効率的にDXリテラシーを高めたい」という場合、無駄なく実践的に学べる研修サービスがおすすめです。
DXリテラシーは一人だけが学んでも効果が限定的なので、全社で底上げすることも重要です。ぜひ、この機会にプロの力を借りながら、組織全体でスキルを高めていきましょう。
-
Next
記事がありません