生成AIの進化を背景に、さらに注目度が高まっているDX。しかし、日本のDXは米国やドイツと比べると依然として遅れているのが現状です。さらに、業界ごとに遅れている具合に差があることも課題となっています。
本記事では、DX化が遅れている業界に焦点を当て、その理由や現状の取り組みをわかりやすく解説します。あわせて、DX化が遅れている業界の取り組み状況・対策もご紹介します。
DX化が遅れている業界は?

日本でDX化が最も遅れている業界は、サービス業界です。次いでDX化が遅れている業界は流通・小売業界ですが、遅れている差はわずかです。
日本の業種別DX取組状況

IPA「DX動向2025」が示す日本の業界別DX取組状況を見ると、業界ごとにDXの遅れ具合に違いがあることがわかります。以下は、日本の業界別DX取組状況を、遅れている業界の順番にまとめた一覧です。
| 業種 | 全社DX | 一部DX | 部門DX | 取組なし | 不明 |
|---|---|---|---|---|---|
| サービス業 | 26.0% | 24.6% | 18.5% | 26.6% | 4.3% |
| 流通業・小売業 | 28.7% | 24.8% | 20.0% | 22.6% | 3.9% |
| 製造業 | 36.9% | 21.9% | 21.8% | 18.2% | 1.2% |
| 情報通信業 | 46.1% | 23.6% | 13.5% | 16.9% | 0.0% |
| 金融業・保険業 | 49.6% | 29.8% | 13.5% | 6.4% | 0.7% |
DX化が遅れている業界の現状を示す上記データを見ると、サービス業界と流通業界・小売業界は「全社でDXを実施する企業」が3割弱、「取組なし」「不明」の合計で見ると、実に3割前後全く手を付けていない状況です。
参照:IPA「DX動向2025」
この結果から、DX化が遅れている業界は、業務が現場中心で属人化しやすく、全社的なデジタル基盤の整備に踏み込めていないことが見えてきました。
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サービス・流通・小売業界でDX化が遅れている理由

IPA「DX動向2025」のデータからは、サービス業界や流通・小売業界でDXが遅れている理由が見えてきます。その背景には、中小企業ならではの課題も含まれています。ここでは、サービス業界や流通・小売業界でDX化が遅れている理由について解説しましょう。
- 知識・人材不足の壁
- 予算不足による投資の壁
- 悪循環がDXを遅らせている
知識・人材不足の壁
サービス・流通・小売業界のDX化が遅れているのは、DXへの知識、対応できる人材不足による壁が挙げられます。IPA「DX動向2025」によると、従業員100人以下の企業では、DXに「取り組んでいない」理由として次の回答が上位を占めていました。
- 自社がDXに取り組むメリットがわからない:53.0%
- DXに取り組むための知識や情報が不足している:49.0%
- DXを現場で推進・実行する人材が不足している:37.9%
- DXに取り組むためのスキルが不足している:36.4%
この結果から、サービス業界や流通・小売業界では、DXの必要性や効果を十分に理解できておらず、DX人材も不足していることがわかります。つまり、DX化が遅れている業界では、知識や人材が不足し、具体的な行動に踏み出せない状況が続いているのです。
予算不足による投資の壁
サービス・流通・小売業界のDX化が遅れているのは、小規模事業者が多いという業界特有の壁も存在します。同調査でDX化が遅れている理由には、「予算が不足している」との回答も27.3%にのぼりました。
特に、従業員100人以下の企業では、約4社に1社が十分な予算を確保できていない状況が明らかになっています。DXにはシステム導入や人材育成など一定の投資が必要ですが、小規模事業者が多い業界では、コスト面の負担もDX化が遅れている要因なのです。
悪循環がDXを遅らせている
上記の結果から、サービス業界や流通・小売業界でDXが遅れている背景には、「メリットが見えない→知識がない→人材がいない→予算も確保できない」という悪循環が読み取れます。
これらの理解・人材・資金の課題が連鎖し、さらにサービス業界や流通・小売業界でのDXが遅れている要因を大きくしています。
DXが遅れている業界は「人的依存が高い」ことが遅れている要因と思われがちです。しかし、実際のDXが遅れている業界のデータからは、情報の不足、DX人材の不在、投資余力の乏しさが多くを占めていることがわかりました。
参照:IPA「DX動向2025」
DX化が遅れている製造業界の課題・対策

サービス業界、流通・小売業界に続き、製造業もDX化の遅れている業界の一つです。IPA「DX動向2025」でも、製造業界は全体の中で3番目にDXが進んでいない領域として挙げられていました。
ここでは、DX化が遅れている製造業界の課題・対策について表で見ていきましょう。
| 業界の課題 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 経営層の理解不足 | DXの効果が伝わらず予算が組めない | 事例共有・効果の数値化 |
| 現場の抵抗感 | これまでのやり方を変えたくない | 試験運用・現場参加型の改善 |
| IT人材不足 | デジタルを扱える人がいない | 社内育成・外部専門家活用 |
| レガシーシステム | 古い基幹システムが足かせ | API連携・ベンダー協力 |
| 投資コストの不安 | 効果が見えず投資判断ができない | 補助金活用・低コストツール |
製造業界が抱えやすい「経営層の理解不足」「現場の不安」「IT人材の不足」といった課題には、役割やスキルに合わせて学べるDX研修が効果的です。
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- AI・IoT・クラウド
- プログラミング(Python)
- CG・デザイン(Illustrator、Photoshop)
- CAD・CAM・BIM
- オフィス(Excel・Word)
など多彩な分野に対応しています。定額の学び放題プランもあるため、まずは手軽にDX研修を始めたい企業様にも最適なサービスです。
物流業界は人材不足が深刻化しており、業務効率化のためにもDX化が急務となっています。物流のDX推進状況については、以下の記事で解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。
DX化が遅れている業界の取り組み・対策
DX化が遅れている筆頭のサービス業界でも、着実に成果を上げている企業があります。ここでは、DX化が遅れているサービス業界でのDX取り組み事例を3つ見てみましょう。
| 会社名 | 業界 | 取り組み | 対策 |
|---|---|---|---|
| ゑびや | 飲食 | AI来客予測・経営可視化 | 生産性向上・属人化解消 |
| 奥山 | 衣料品 | EC開始・SNS活用 | 写真品質改善・顧客対話強化 |
| 三上旗店 | 旗製造 | Accessで業務一元化 | 柔軟な内製化・セキュリティ強化 |
ゑびや
三重県伊勢市の創業150年の老舗飲食店「ゑびや」は、客単価800円・会計はそろばんという、まさに「DX化が遅れているサービス業界の典型例」の状況でした。
しかし、生産性向上、労働時間・コスト削減、属人化解消を目標に、AIによる来客予測や経営データを可視化するツールを自社開発しました。これにより、客単価3.5倍・売上5倍・利益50倍を実現し、実に7年かけてDX化が遅れている状態から脱却したのです。
さらに、EBILABを設立し、同じくDX化が遅れているサービス・小売事業者の支援にも取り組んでいます。
株式会社奥山
次のDX化が遅れているサービス業界の事例として、衣料品店「株式会社奥山」を紹介します。同社は、パソコンすらなかった状態から、商品の魅力を伝えるための写真品質の改善、さらに専門家への相談を重ねながらオンライン販売を拡大しました。
コロナ禍で実店舗の売上が激減した際も、ECがその減少分を補い、コスプレ需要など新たな顧客層を獲得。さらにSNSを活用してリピーターを増やし、顧客との接点を強化しています。
DX化が遅れている業界であっても、事業規模が小さい企業ほど「身近さ」や「対話のしやすさ」を強みに変え、顧客との信頼関係を築けることを示した事例です。
株式会社三上旗店
最後のDX化が遅れているサービス業界の取り組み事例は、旗類の製造・販売を行う株式会社三上旗店です。
同社は、見積書作成から受注・在庫・請求・与信管理までを統合し、見積もり価格のばらつき、転記の負担を解消しました。社内で更新・修正できるAccessを活用し、小規模企業に最適な運用体制を整えています。
また、デジタル化と同時にバックアップやセキュリティソフトも導入し、結果として事務作業が大幅に効率化され、資金繰りも改善しています。小さな取り組みから、DX化が遅れているサービス業界の課題を解決している好例です。
DX化が遅れている業界から見る対策方法
続いて、上記の業界の事例を基に、DX化が遅れている業界での対策方法を解説します。
- 「スモールスタート」を基本にする
- 「部分デジタル化」から始める
- 「身近さ」や「対話力」を生かす
- DXの成功は段階的に広げることが重要
「スモールスタート」を基本にする
DX化が遅れているサービス業界では、以下のようにいずれも小さな一歩からDXを始めて成果を出したという共通点があります。
- ゑびや:1台のパソコンでのデータ入力
- 株式会社奥山:写真改善とEC開始
- 株式会社三上旗店:身近なAccessを活用
このように、取り組みの規模は大小を問わず、どんな手法でも「デジタル化の効果を実感」できることが重要です。「できた」「変わった」と現場で感じることが、次のステップへ進む原動力になります。
「部分デジタル化」から始める
DX化が遅れている業界では、すべてを一気に変える必要はありません。むしろ、部分的なデジタル化が大きな効果を生みだすこともあります。先ほどの業界の事例でも、ECやなど手軽で身近なツールを用い、新たな顧客を獲得していました。
こういった部分的なデジタル化は、「コストや導入負担」といったDX化が遅れている業界が抱えがちな課題を一気に解消してくれます。まずはスモールスタートで成功体験を積むことから始めると、DX推進の障壁が大きく下がります。
「身近さ」や「対話力」を生かす
DX化が遅れている業界の多くは小規模事業者ですが、実は、小規模だからこそ顧客との距離が近くなりやすいものです。先ほどの株式会社奥山でも、SNSで顧客と直接つながりながら、リピーター化していました。
例えば、コメント機能を活用し返信するだけでも、顧客との距離はぐっと近くなります。小規模のサービスはアットホーム感があるので、対話力を生かせば、大企業以上に顧客との良い関係性を築けます。
DXの成功は段階的に広げることが重要
DXが遅れているサービス業界の事例では、次の4つの対策をとっていました。
- 小さく始める
- 成果を可視化する
- DXの効果を共有する
- 次の領域へ広げる
つまり、いきなり全社改革を目指すのではなく、まずは身近な業務から取り組み、その成功体験を社内で共有しながら少しずつ範囲を広げていく、という手順で成功していました。
このように段階的に進めることこそが、DXが遅れている業界にとって最も現実的で、成功につながりやすいアプローチといえるでしょう。
DX化が遅れている業界についてまとめ
DXが遅れている業界は、サービス業界や流通業界・小売業界が中心で、その次に製造業界が続いています。サービス業界・流通・小売業界では企業規模の小ささが、製造業界では経営層の理解不足や現場の賛同を得にくいことが、DXが進まない主な要因です。
DXが遅れていると感じたら、まずは自社の現状を正しく把握することが大切です。ぜひDXスキルチェックを活用して、DXが遅れている状況を克服し、着実にDXを進めていってください。