現代社会において、DX(デジタルトランスフォーメーション)は企業の成長と競争力維持に欠かせない要素となっています。
しかし、いざDX人材育成を始めようとしても、どのような資格を取得させるのが効果的なのか、具体的なイメージを持てない企業の担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、DX人材育成に役立つおすすめの資格を15個厳選し、ジャンルごとに分かりやすく解説します。また、DX人材に求められるスキル、自社に最適な資格の選び方もお伝えします。
DX人材育成に求められるもの|2025年の崖
DX人材育成とは、企業が従業員に対してDX(デジタルトランスフォーメーション)に関するスキルを習得できるよう、包括的にサポートする取り組み全般を指します。
DXとは、デジタル技術でビジネスを根本から変革し、企業の競争力を高める取り組みです。
近年、リスキリング(学び直し)の重要性が高まる背景には、急速な技術革新とそれに伴う人材不足加速化が起因しています。
特にAI人材の不足は深刻化しており、経済産業省提言で広まった2025年の崖が到来すれば、8.8万人が不足すると試算されました。その現状や改善策については、以下の記事で詳しく解説しています。
DX推進系関連の4資格
まずはじめに、DX推進を対象とした資格を4つ紹介します。
資格名 | 難易度 | 受験方法 | 概要 |
DX検定 | 高め |
|
IT先端技術とビジネストレンドの両方を評価する民間資格 |
+DX認定資格 | 中程度 |
|
IoT検定制度委員会主催のDX実践知識を認定する資格 |
DXパスポート認定試験 | 易 |
|
DXの基本知識、ビジネス活用など幅広く出題 |
DX推進アドバイザー認定試験 | 中~易 |
|
DXの基本知識と推進ノウハウを問う資格 |
①DX検定
DX検定は、デジタル技術とビジネス戦略の融合を評価する資格試験で、日本イノベーション融合学会が認定しています。試験では、クラウド、AI、IoTなどの先端技術と、それらを活用したビジネスモデル構築の知識を問われ、実務に直結した出題が多いのが特徴です。
合格率はプロフェッショナルレベルで約3%、エキスパートレベルで約9%、スタンダードレベルで約17%。一般的な資格試験と比べるとかなり低めですが、この厳格な合格基準が資格の価値と人材の信頼性を担保しています。
②+DX認定資格
+DX認定資格は、企業のデジタル変革を推進できる人材を認定する資格で、IoT検定制度委員会が主催しています。
実務経験者の知見をベースにした試験内容で、テクノロジー知識、組織変革の方法論やプロジェクト管理能力などが出題されます。合格者にはデジタル証明書が発行され、完全オンライン形式で受験可能です。
③DXパスポート認定試験
DXパスポート認定試験は、DXの基本的な知識とビジネスへの影響を評価する資格です。
試験は一般財団法人全日本情報学習振興協会が主催し、出題内容はDX推進に関する資料に基づいており、事前に資料を読み込むことで合格を目指せます。
この試験は、DXの基礎を問われるため、DX人材育成の第一歩として最適です。
合格基準は正答率70%以上ですが、問題の難易度に応じて調整されることがあります。
④DX推進アドバイザー認定試験
DX推進アドバイザー認定試験は、組織のデジタル変革を導く助言者としての人材力を問われ、DXパスポート認定試験の第2ステップとして適した資格です。
一般財団法人全日本情報学習振興協会が主催し、試験ではDXの基本概念から実践手法まで幅広く評価します。試験は100問の形式で、有効期間は2年間。定期的な更新講義受講により、最新知識を持つ人材育成を確保しています。
DXに関連するAI系4資格
続いて、AI系のDX人材育成に適した資格を4つご紹介しましょう。
資格名 | 難易度 | 受験方法 | 概要 |
G検定 | 中 |
|
AIやディープラーニングの基礎知識とビジネス活用を問う検定 |
E資格 | 高 |
|
AIエンジニア向けの高度な資格 |
Python3エンジニア認定試験 | 中~易 |
|
Pythonの基礎から実践まで段階的に技術力を証明 |
データ分析実務スキル検定(CBAS) | 中~易 |
|
ジネスパーソン向けのデータ分析スキルを証明 |
①G検定
日本ディープラーニング協会が主催するG検定は、AI技術をビジネスシーンで活用するスキルを証明する資格です。AIの基礎を体系的に学習する人材育成に最適で、AIエンジニア向けの高度な資格・E資格の第一ステップとしても適しています。
試験内容はAIの基礎概念から始まり、ディープラーニングの基本原理、ビジネス応用事例、さらには倫理問題や社会的課題まで広範囲にわたります。
ただし、プログラミング実装は問われないため、AI初心者にもおすすめです。
G検定を最短で目指せる!G検定対策講座
G検定対策講座は、短期で効率的にG検定合格を目指せます。
カリキュラムは午前と午後の2部構成で、AIの基礎から着実に習得し、短期間でG検定合格を目指せる講座です。ビジネスへの応用力を高める人材育成を目指す企業の研修にも最適です。
②E資格
E資格は、ディープラーニングの理論理解、および実装力を証明する資格です。
G検定がAIの基礎知識を問うのに対し、E資格はより実践的なAI開発スキル人材育成を目的としています。
主催はG検定と同じく日本ディープラーニング協会で、受験資格として日本ディープラーニング協会認定のプログラム修了が必須です。
難易度は高いですが、AIエンジニア人材育成を目指す企業に適しています。
JDLA認定にも対応!E資格対策ディープラーニング短期集中講座
こちらのE資格取得を目指す講座は、短期でE資格のシラバスを網羅する実践的な講座で合格率83%越えです。JDLA認定講座なので、受講後は即E資格の受験にチャレンジできます。
事前学習としてオンラインで基礎講座を学ぶため、効率的なAI人材育成にも最適です。
セミナー名 E資格対策ディープラーニング短期集中講座 運営元 ProSkilll(プロスキル) 価格(税込) 54,780円〜 開催期間 4日間 受講形式 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング
③Python3エンジニア認定試験
Python3エンジニア認定試験は、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が運営するPython言語のスキルレベルを証明する資格です。
Python3エンジニア認定試験は、以下の3段階で構成されています。
基礎試験 | Pythonの文法や基本的なデータ構造 |
実践試験 | 実務レベルのライブラリ活用法や設計手法 |
データ分析試験 | PandasやNumPyなどを使ったデータハンドリング技術 |
「データ分析試験」はAI開発の前提となるデータ処理技術に焦点を当てており、DX人材として重要なスキルセットを証明できます。
④データ分析実務スキル検定(CBAS)
株式会社ピープルドットが運営するデータ分析実務スキル検定(CBAS)は、データ活用力・実践力を証明する資格です。試験では、ビジネス課題の分析方法、データサイエンティストとの効果的な協働方法、分析結果の経営判断への活かし方まで幅広く問われます。
現場でデータを活用する「シチズン・データサイエンティスト」から、組織全体のデータ活用を推進する「プロジェクトマネージャー」まで、様々な人材育成に適した資格です。
DXに関連するIT系7資格
最後に、IT系のDX人材育成におすすめの資格を7つご紹介します。
資格名 | 難易度 | 受験方法 | 概要 |
ITコーディネータ試験 | 中 |
|
経営とITの両方の知識を測定する資格 |
ITストラテジスト試験 | 高 |
|
IT業界では最難関と評される国家試験 |
ネットワークスペシャリスト試験 | 高 |
|
IT系国家資格の中でも高難易度に位置 |
情報処理安全確保支援士試験 (SC試験) |
高 |
|
セキュリティ専門知識を証明する国家資格 |
ITパスポート試験 | 易 |
|
IT系国家試験の入門レベル |
基本情報技術者試験 (FE試験) |
中~高 |
|
ITエンジニアの基礎スキルを証明する資格 |
CIW JavaScript Specialist | 中~高 |
|
英語で出題されるJavaScriptの国際資格 |
①ITコーディネータ試験
特定非営利活動法人ITコーディネータ協会が主催するITコーディネータ試験は、企業の経営とITの両面から課題解決できる人材の証明となる資格です。
試験内容は「IT経営推進プロセスガイドライン」に基づき、経営戦略から業務改革、IT戦略、IT利活用まで幅広い知識が問われます。
受験に特別な学歴や資格は不問で、DX推進において経営視点とIT視点の両方を持つ人材育成に最適な資格です。
②ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験は、経済産業省が管轄する国家試験であり、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって実施されています。
この試験は、ITを活用した経営戦略の策定から実行までを担う高度IT人材を認定するもので、合格率は例年15%前後と、高度な専門知識とスキルが求められる難関資格です。
試験では、IT業界で「最難関」と評される高度な内容が出題され、経営戦略、IT戦略、システム戦略、プロジェクトマネジメントなど、幅広い知識と経験が問われます。
そのため、この資格は、DX推進の中核を担うリーダー的人材育成におすすめです。
③ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施するIT資格です。国のITスキル標準でレベル4に位置づけられ、合格率は12〜15%。
ネットワーク関連資格の中でも高難易度に位置しています。
試験は午前Ⅰ・Ⅱ、午後Ⅰ・Ⅱの4部構成で、テクノロジー分野の深い知識だけでなく、長文読解力や実践的な問題解決能力も試されます。
この資格は、DXの基盤となるネットワーク技術の専門家を育成したい企業に最適です。
④情報処理安全確保支援士試験(SC試験)
情報処理安全確保支援士試験は、サイバーセキュリティの専門家を認定する国家資格です。
主催は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で、IPAが管轄するレベル4に相当し、偏差値約60と中小企業診断士や社会保険労務士と同程度の難易度とされています。
試験では国内外のセキュリティ関連の幅広い知識と最新動向への対応力が問われます。
DXの進展に伴いサイバー攻撃のリスクが高まる中、企業のセキュリティ対策を担える人材育成に適した資格です。
⑤ITパスポート試験
ITパスポート試験は、情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験の一つで、経済産業省が管轄しています。情報処理の促進に関する法律に基づき、ITに関する基礎知識を問う資格で、合格率は平均して50%程度です。
この試験は、IT資格の入門レベルとして位置づけられており、IT初心者の人材育成に最適です。試験範囲は、テクノロジ系(IT技術)、マネジメント系(IT管理)、ストラテジ系(経営全般)の3分野に及び、ITに関わりのない業務に従事する方でも、DXの基礎知識を習得できます。
⑥基本情報技術者試験(FE試験)
基本情報技術者試験は、ITエンジニアとしての基礎知識とスキルを証明する国家資格です。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営し、合格率20〜30%程度で推移しています。
この資格は、ITパスポートより2段上のレベルに位置づけられ、プログラミングやネットワーク、データベースなどIT全般の基礎知識が問われます。
DX人材の基礎力を証明する資格として、業界未経験者の人材育成におすすめです。
⑦CIW JavaScript Specialist
CIW JavaScript Specialistは、Web開発の基盤となるJavaScriptの専門知識を証明できる資格です。主催はアメリカのCertification Partner社で、試験内容は基本構文、DOM操作、イベント処理、Ajax通信、jQueryなどのライブラリ活用まで幅広く出題されます。
取得後の国際的な評価は高く、特に海外企業や多国籍チームを視野に入れた人材育成におすすめです。なお、この資格は英語で出題され、日本語対応はしていません。
DX人材育成の資格の選び方
DX人材育成の資格を選ぶ際、以下のポイントを押さえましょう。
目標や育成したい人材像を明確にしよう
DX人材育成の資格選びは、企業の目標や育成したい人材像を明確にしてから進めることが重要です。まずは自社のDX推進に必要なスキルを特定し、それに合った資格を選定しましょう。
企業の戦略目標と育成したい人材像が曖昧な場合、資格選定の方向性が定まらず、結果として育成効果が著しく低下する可能性があります。
この際、市場分析やニーズを踏まえ、自社のDX推進における課題を詳細に特定することが重要です。
レベル別に資格を選定しよう
DX人材育成の資格はレベル別に選ぶことも重要です。
初心者向けの人材育成なら、ITパスポート試験やDXパスポート認定試験など、入門レベルの資格から始めるのが効果的です。これらは基礎知識の習得に適しており、合格率も比較的高めに設定されています。
一方、専門人材の育成を目指すなら、目的別に資格を選ぶことが大切です。
例えば、AI活用人材ならG検定やPython3エンジニア認定試験、セキュリティ専門家なら情報処理安全確保支援士試験、経営戦略とITの融合を担う人材にはITコーディネータ試験やITストラテジスト試験が適しています。
資格取得はあくまで通過点と捉えよう
DX人材育成において、資格取得はあくまで通過点と捉えなくてはいけません。
重要なのは、習得した知識やスキルを実際の業務でどう活かすかという視点です。そのため、資格取得をゴールとするのではなく、実務での活用を見据えた育成計画を立てましょう。
企業の成長段階やDX推進の状況に合わせて、段階的に資格取得を促進するのも有効です。
資格取得は、組織のDX推進を加速させるための手段です。
最終的な目標は、実践的なスキルと知識を備えた人材を育成し、組織全体の変革を推進することであることを常に意識してください。
DX人材に求められるスキル
DX人材には、技術的なスキルに加え、ビジネス課題を解決するための幅広い知識と能力が求められます。具体的には、以下の3つのスキルが重要です。
- データベースとSQLの基本
- プログラミングの基礎
- AIの仕組みと活用
①データベースとSQLの基本
会社のデータを活用するには、データベースの仕組みと、データを取り出すSQLという言語の理解が必須です。これにより、データに基づいた判断や業務の効率化ができます。
②プログラミングの基礎
データ分析や自動化システムを作るには、プログラミングの基礎知識が必須です。
中でも、初心者にも学びやすく、汎用性が高いPythonは、DX人材として活躍したい方におすすめの言語です。
③AIの仕組みと活用
AI技術は、業務効率化や新しい価値を生み出すために重要です。
AIにできること、できないことを理解し、適切な場面で活用する能力が求められます。
これらのスキルを習得することで、企業はDXを内製化し、コスト削減やスピードアップを実現できます。
DX人材育成に最適!企業向けDX・AI人材育成研修サービス
企業向けDX・AI人材育成研修サービスは、企業が自社内でDXを推進(内製化)できるよう、人材育成を支援し、企業の成長戦略に合わせた柔軟な研修を提供します。
場所や時間を問わず学習できる「eラーニング」にも対応しているので、日々の業務と両立しながら、効率的に研修を進めたい企業にも最適です。
DX人材の主な職種
DX人材の職種は多岐にわたります。
以下に、DX人材の主な職種とそれぞれの主な業務内容を一覧表にまとめました。
職種名 | 主な業務内容 |
プロジェクトマネージャー | DXプロジェクトの計画、実行、管理 |
エンジニアリングマネージャー | システム開発の技術的なリーダーシップを発揮 |
ビジネスデザイナー | 新しいビジネスモデルやサービスをデザイン |
UI/UXデザイナー | ユーザーに使いやすいインターフェースをデザイン |
データサイエンティスト | データ分析に基づいてビジネス上の課題を解決 |
エンジニア/プログラマ | システムやアプリケーションの開発 |
セキュリティエンジニア | DX推進における情報セキュリティ対策の設計、実装、運用 |
DXコンサルタント | 企業のDX戦略策定、実行支援、人材育成などを包括的に支援 |
これらの職種でDX人材として活躍するには、各分野に応じた専門知識とスキルの習得が大きな助けとなります。その習得度合いを客観的に証明し、キャリアアップに繋げる上で、資格取得は非常に有効な選択肢です。
DX人材育成を加速化するデジタルスキル標準(DSS)
DX人材に必要なスキルを明確化し、学習目標を設定する上で役立つのが、デジタル庁が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」です。
デジタルスキル標準は、日本全体のDX推進を後押しするための人材育成の指針で、資格試験ではなく、ビジネスパーソン全般とDXを担う専門人材、それぞれに必要なスキルを整理したフレームワークになっています。
デジタルスキル標準は2つの要素で構成
デジタルスキル標準は、以下の2つの要素で構成されています。
①DXリテラシー標準
全てのビジネスパーソンが、デジタル時代において共通して持つべき基本的な知識、スキル、および考え方の定義です。これには、デジタル技術の基礎知識、データ活用の基本、情報セキュリティの重要性、そして変化に対応するための学習姿勢などが含まれます。
②DX推進スキル標準
この標準は、具体的な職務役割ごとに必要なスキルを示すことで、企業がDX人材を採用・育成する基準です。具体的には、データサイエンティスト、サイバーセキュリティなど、高度な専門知識と実践スキルを持つ人材を定義しています。
企業のDX戦略と資格の活用
企業ごとにDXの進め方は異なるため、DSSはそのまま適用するのではなく、自社の事業戦略や組織文化に合わせて活用することが重要です。DSSを基に独自の人材育成プランを設計することで、より実践的なDX推進が可能になります。
また、DX推進スキル標準で定められたスキルは、資格の取得によって客観的に証明できます。
企業が資格取得を奨励すれば、従業員のスキル向上を促し、組織全体のDX推進を加速させる効果が期待できるでしょう。
DX人材資格についてまとめ
この記事では、DX人材育成に役立つ資格を紹介しました。
DX人材育成に有効な資格は多岐にわたりますが、専門分野や難易度は様々です。
まずは、組織が求めるDX人材像を明確にし、必要なスキルを洗い出すことから始めましょう。
次に、洗い出したスキルに基づいて、適切な資格を選定し、受験を支援する人材育成計画を策定します。効果的なDX人材育成のためには、個々のスキルレベルを正確に把握し、最適な学習機会を提供することが重要です。
資格取得はあくまでも手段であり、ゴールではありません。
実務で知識やスキルを最大限に活かせる環境を整備してこそ、真のDX人材育成が実現します。
