企業がDX化を成功させるためには、DX人材の獲得が不可欠。このDX人材を得るために行われる方法の1つがDX人材育成です。本記事では、DX人材育成に取り組んだ企業の成功事例を紹介。併せて、DX人材育成のメリット・デメリットも解説します。
DXの人材育成とは
DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称です。デジタル技術を活かしさまざまな変革を起こすための取り組みのことで、経済産業省も推進しています。DX化を行うことで、企業は社内の業務をより効率的な形に整え、事業の生産性アップなどプラスの影響を得られます。そしてこのDXを推進していくために必要なのが、DX化に必要なスキルを身に付けたDX人材です。DXは企業がいきなり推進しただけではなかなか浸透しません。DXについてよく理解し、進めるために必要なスキルを有しているDX人材が現場にいるからこそ、現場にDXが広がっていくと考えられます。そしてDX人材を得るためによく行われる取り組みの1つが、DX人材育成です。
DX人材育成の事例5選
それでは、DX人材育成の成功事例を紹介します。自社の求めるDX人材を育成するため、独自性を活かしたユニークな教育プログラムを築き成功している企業がいくつも見られます。
KDDI株式会社の事例
大手通信企業であるKDDI株式会社は、DX人材育成を目的とした「KDDI DX University」を社内に設立。実際に活用していけるスキルを身に付けるため、「必要な人材の定義(Define)」「育成人材の選定(Discover)」「学習とスキル開発(Develop)」「プロジェクトへの配置(Deploy)」の「4Dサイクル」を意識した教育が行われています。実際に受講した従業員たちからは、学んだことを現場ですぐに活かせる・自分のスキルアップにつながる・会社のDXに対する取り組みがよく理解できるなど好評を得ており、受講者が着実に増えています。
日清食品ホールディングス株式会社の成功事例
即席麺で言わずと知れた国内有数の企業です。日清食品ホールディングス株式会社では、全従業員のデジタルスキルアップを目指した人材育成を展開しています。また、人材育成と同時に現場のデジタル化も進めていきました。具体的にはローコードの開発ツールの活用で、これにより現場で必要なアプリを内製することが可能に。アプリを自前でつくれることにより、業務の効率化やデジタル化がどんどん進んでいきました。日清食品ホールディングスは、DX化に成功した企業としてもよく取り上げられています。
キリンホールディングス株式会社の事例
ビールや清涼飲料水の国内大手メーカーとしてお馴染みのキリン。そのキリングループの1つであるキリンホールでイングス株式会社は、社内に独自のDX人材育成プログラム「キリンDX道場」を構築しました。「白帯(初級)」「黒帯(中級)」など、武道の道場にちなんだ名称でレベル分けを行い、それぞれのレベルに応じた内容で教育を実施しています。このプログラムで目指しているのは、従業員全体のDXリテラシーの向上です。教育の題材に実際の社内の事例なども取り入れつつ、自分事としてDXをとらえ、課題発見・解決ができるような力を身に付けるためのもの。プログラムを終えた後の受講者には、DXに興味を持ちさらに上のレベルのコースを受講したり、得た知識・スキルを現場で活用したりなど、育成の成果が見られています。
ダイキン工業株式会社の事例
空調機器を始め、幅広い製品を開発・販売する大手企業です。ダイキン工業株式会社では、社内に「ダイキン情報技術大学(DICT)」を創設。これは、大阪大学の協力とともにつくったDX人材育成のための講座です。大阪大学や他の教育機関・研究機関などから講師を招き、専門的な内容を学べることが特色の1つ。また、従業員のレベルに応じた幅広い講座が用意されていることもポイントです。この講座で学んだことを現場で活用し、より効率的な業務や製品の品質アップを実現している従業員も現れており、育成の結果が見え始めています。
ENEOSホールディングス株式会社の事例
エネルギーを中心に事業展開する世界規模のエネオスグループ。そのグループを構成するENEOSホールディングス株式会社では、DX人材に必要なスキルを「ABCD」と定義。Aは「AI Analytics(AI分析)」、Bは「Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)」、Cは「Cyber Security(サイバーセキュリティ)」、Dは「Design Thinking(デザイン思考)」です。そしてこのABCDそれぞれを育成する研修プログラムをつくり、DX人材の育成に取り組んでいます。このプログラムによって、高度なDXのスキルを身に付ける従業員も増えています。
DX人材育成のメリット・デメリット
DX人材育成を検討するにあたっては、育成におけるメリットとデメリット、両方を押さえておくことが大切です。最後に、DX人材育成の主なメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
DX人材育成の大きなメリットは、会社独自のDX人材を育成できることです。DX人材を確保する場合、自社で既に働いている人材をDX人材に育成するか、DX人材を新たに雇用するかのどちらかになります。もう既にDXの知識・技術をしっかり身に付けた人材を雇用するのは、スピーディーな方法ではあります。ただし、新たに雇用した人材は、会社の社風や事業内容などに関してはまだよく理解していない新人です。そのため、企業のカラーをよく理解したDX人材になれるかどうかは未知。企業のDX化を成功させるためには、DXのスキルが高い人材を確保するだけでなく、そのDX人材が企業の性格をよく理解してDX化を進めていくことが不可欠なのです。社内の人材をDX人材に育成できれば、会社のカラーを理解し、その上で適した形でDX化を進めていける理想的なDX人材が育成できる可能性が高いでしょう。また、DX人材育成の仕組みができれば、多くのDX人材育成が可能になります。外からDX人材を獲得してくるとなると、そのたびに採用コストなどがかかりますが、社内の育成プログラムを利用することで、社内の人材全員のDX人材育成を試みることも可能です。
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デメリット
DX人材育成のデメリットとして考えられるのは、育成の結果が現れるまで時間がかかることです。前の段落で紹介した通り、DX人材育成に成功した事例もあります。しかし、DX人材育成に失敗している企業も少なくないのです。DX人材育成を成功させるためには、やみくもに教育を行うだけでは不十分。まず自社がDX化を進めるためにはどうしたらいいのかを考え、そこからDX化を推進するためにどのようなDX人材が必要なのかを分析します。そして獲得したいDX人材像が具体的に見えてきたら、その人材に求められるスキルと、スキルを育成するための取り組みを考えていくのです。また、成功事例などを参考にし、良い部分を取り入れていくことも重要と言えます。また、DX人材育成の仕組みづくりに手間や労力がかかることもデメリットの1つではあります。これだという仕組みができてしまえば後はスムーズですが、有効な教育の仕組みを確立するまでが難しい部分です。
DX人材育成に成功した企業事例から学び自社の取り組みに活かそう
DX人材はDX化をせいこうさせるために欠かせない存在です。しかしその育成は一朝一夕では成りません。大切なのは、自社の状況・課題を分析すること、他社の成功事例に学ぶこと、すぐに成功につながらなくても焦らず取り組むことです。ぜひ今回解説した内容を参考に、自社に必要なDX人材育成の取り組みについて考えてみてください。