DXを推進する際、他社の成功事例を参考にするのが主流です。しかし、逆に失敗から得られる学びはないのでしょうか?
この記事では、よくあるDXの失敗例6選、日本企業のDX失敗事例4選を紹介し、そこから失敗の理由・成功のコツを検証します。「DXに失敗したら…」と不安を感じている担当者の方は、ぜひ自社の状況と照らし合わせながら参考にしてください。
よくあるDXの失敗例6選
よくあるDXの失敗は、「明確な目的がない」「DX化が適切でない」「DX推進人材が不足している」などです。では、典型的なDXの失敗例を6つお伝えしましょう。
①目的があいまいなままデジタル化を推進
明確な目的がないまま「とりあえず最新ツールを導入しよう」とDXを進めてしまうケースは多く、これは後にDXの失敗を招きがちです。たとえば、部門ごとに異なるツールがバラバラに導入され、社内システムの連携がかえって複雑化してしまう、といった状況です。
②古い業務プロセスをそのままシステムへ移行
非効率なやり方を見直さないまま最新システムへ載せ替えてしまうのも、よくあるDXの失敗パターンです。これは、業務が変わらないためせっかくの新システムの効率化が活かせず、「DXが定着しない」「効果が限定的」といったDXによくある失敗の状況を招いてしまいます。
③現場を置き去りにしたトップダウンの推進
現場の意見を聞かずに上層部だけでシステム導入を進めてしまうことも、DXの失敗のよくある要因です。現場の業務フローに合わないシステムは「使いにくい」といった現場の反発を買いやすく、結果としてデータの入力が進まない、といったDXの失敗を生じます。
④データ活用ができずに成果につながらない
DXで巨額を投じてデータ分析基盤を作っても、肝心の戦略やデータを活用できるデータ人材(アナリスト・データサイエンティスト)がいなければ意味がありません。結果として「データの品質低下」「分析結果の信頼性が低い」というDXの失敗になりがちです。
⑤レガシーシステムから完全に脱却できない
次は、複雑な旧システムを把握する人材が少なく、部分的な改修でごまかしながら使い続けた際によくあるDXの失敗です。部分的な改修は構造の複雑化を生みやすく、「属人化がさらに進んでしまった」というDXを逆行するような失敗につながります。
⑥外部ベンダー任せで内製化が進まない
社内のIT人材が不足している企業では、DX推進を外部のコンサルティング会社やシステムベンダーに任せきりになりがちです。この場合、自社にノウハウが蓄積されないため、運用・改善コストの負担の圧迫、トラブル時のシステム停滞といったDXの失敗につながりやすくなります。
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日本企業のDX失敗事例4選

続いては、日本企業におけるDXの失敗事例を4選ご紹介します。具体的な事例からDXが失敗する本質をぜひ読みとってみてください。
| タイトル | 企業名 | 状況 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| オムニ7の挫折 | セブン&アイ | ECの売上が低迷し終了 | 戦略ミス・設計不適合 |
| セブンペイの短命 | セブン&アイ | 不正被害で3ヵ月で終了 | セキュリティ不足 |
| FANCY出店の失敗 | 三越伊勢丹 | 現地での反応薄く撤退 | 市場不一致 |
| 基幹システム刷新トラブル | 江崎グリコ | 出荷停止・業績悪化 | 移行時のミス |
①オムニ7の挫折|セブン&アイ
セブン&アイのDX失敗事例は、ECサイトとリアル店舗双方の「良いとこどり」を目指し、2015年にスタートさせたECモール「オムニ7」です。売上目標1兆円を掲げていたものの、リリース当初から売上は伸び悩み、数度のリニューアルも成果につながりませんでした。
当時の井阪社長は「Amazonや楽天と同じ多数向けECに寄りすぎ、しかもシステム起点だった」ことを失敗の要因として述べていました。このDXの失敗によってセブン&アイは2023年に同サービスを終了しています。
②短命に終わったセブンペイ|セブン&アイ
次もセブン&アイのDX失敗事例で、こちらは「セブンペイ」というスマートフォンを用いた決済サービスです。
購買データの収集を目的に2018年にスタートしたものの、基本的な「2段階認証」の欠如というセキュリティの弱さから、不正アクセスにより総額3,800万円の損失が発生。結果、3ヵ月の短さで「失敗」という結果になりました。
なお、パスワードの再設定をアナウンスしたものの、問い合わせの多さから大混乱を引き起こしています。
③「FANCY」出店の失敗|三越伊勢丹
次は、三越伊勢丹がデジタル分野への挑戦として、アメリカのソーシャルコマース「FANCY」に日本企業として初出店した際の失敗事例です。2013年当時、米国のセレブが紹介するこの「FANCY」では、紹介された商品がタイムラインに乗って次々売れていました。
この流行にあやかり、日本の製品を世界中に展開しようと試みたものの、期待とは裏腹に現地ユーザーからの反応は少なく、コストに見合う成果は得られませんでした。結果として、このDXは「失敗」という結末を迎えたのです。
④基幹システム刷新トラブル|江崎グリコ
江崎グリコが2024年に取り組んだERPベースの新基幹システムへの刷新において、深刻なDXの失敗が発生しています。切り替え時の大規模なトラブルにより「プッチンプリン」をはじめとする主力チルド食品が長期間出荷停止となったのです。
このDXの失敗により、業績も下方修正を余儀なくされ、以降経営陣は「基幹システム刷新」に完全に否定的になったのです。このDXの失敗は他企業にも波及し、基幹システム刷新を見送る経営者も増える結果となりました。
参照:日経クロステック
今までDXの失敗事例を見てきましたが、成功事例もあわせて見ることで、多角的な学びとヒントが得られます。
以下の記事では、DXで成果を上げた企業「DX銘柄」に選ばれた31社をまとめて紹介しています。成功企業に共通する取り組みや、そこから見えてくるDX成功のポイントも解説しているので、ぜひ自社のDX推進の一助にお役立てください。
DXに失敗する理由から成功のコツをつかもう!
企業がDX推進に意気込んでいても失敗してしまうケースは後を絶ちません。DXでの成果を得るためには、こうしたDXの失敗を他人事と思わないことです。ここでは、DXに失敗する理由と、そこから見えてくる成功のコツを解説します。
- 技術の導入が目的化している
- 現場や協力体制が整っていない
- DXの手法を見誤っている
①技術の導入が目的化している
DXに失敗する理由の一つは、「まずITやAIツールを使おう」といった技術優先の姿勢です。DXとは本来「デジタル技術を通じて新たな価値を創出すること」ですが、手段である技術の導入自体が目的化してしまい、DXが失敗するケースは少なくありません。
もし「失敗した」と思ったら、今後はDXの真の目的を深く理解したうえで取り組むことを心がけてください。ITやAIの導入はあくまで通過点(手段)にすぎないことを覚えておきましょう。
②現場や協力体制が整っていない
DXに失敗する企業には、現場を無視してトップダウンで押し付ける、またはベンダーに丸投げするといったケースも見られました。現場の協力が得られず自社にノウハウも残らない体制では、システムが形骸化してDXの失敗を招くことになります。
ここから成功への道筋を見出すには、最初から現場視点でDXの必要性を探ることです。各部署が同じ思いをもってDX推進チームを作ることが、DXの失敗から学び取れる成功のコツといえるでしょう。
③DXの手法を見誤っている
DXに失敗するのは、「とりあえずアジャイル」のように見切り発車する、または時期尚早な人材を採用することも要因です。こうした手探り状態の投資は無駄になりやすく、結果としてコストばかりが膨らみ、DXの失敗につながるケースは少なくありません。
このDXの失敗からわかるのは、慌てず自社の現状を正しく見極めることの重要性です。自社の規模や状況に応じてDX化を進めることが、DXの失敗から学べるDX成功のコツなのです。
しかし、DXの失敗から学んだ成功手法はわかったものの、「どうやって進めればいいのか道筋が見えない」と思う企業様もいるでしょう。
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DXの失敗で企業が直面する影響・リスク
ところで、企業がDXに失敗すると、どういった状況に陥るのでしょうか?まずは、企業がDXに失敗したときに陥りやすい3つの例をお伝えします。
コスト負担が高まる
DXの失敗により、初期費用はもちろん、運用段階でのコスト負担も生じるリスクがあります。たとえば、クラウドの利用料やセキュリティ対策費、ライセンス費用などで、こうした多様なコストは徐々に企業経営を圧迫します。
現場の抵抗感が強まる
DXの失敗で企業内に生じやすいのは、DXに対する不安や抵抗感の強まりです。もともとDX化に対する不安を持っていた社員の場合、こうした状況がより顕著に表れて、「失敗した取り組み」として今後のDX化を妨げてしまいます。
セキュリティリスクが増加する
DXに失敗すると、DX化による複数のシステム連携から、アクセス権限が曖昧になりやすい点もデメリットです。これにより、情報漏洩やサイバー攻撃へのリスクが高まり、セキュリティ上の綻びが見えたとき「失敗した」と感じてしまいます。
DX化を目指す日本企業の現状・取り組まない理由
DXの失敗によるリスクや影響は深刻ですが、では、現在の日本企業はどのような状況にあるのでしょうか。DX化を目指す各社の取り組み状況とその背景にある課題を、情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2025」をもとに見ていきましょう。
日本・アメリカ・ドイツのDX取り組み状況
日本とアメリカ、ドイツのDX取り組み状況は、全体的にはアメリカが他国をリードしていますが、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」企業は日本とアメリカがほぼ同水準でした。
| 項目 | 日本 | アメリカ | ドイツ |
|---|---|---|---|
| 全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる | 34.4% | 34.6% | 26.4% |
| 全社戦略に基づき、一部部門でDXに取り組んでいる | 24.0% | 31.2% | 29.2% |
| 部署単位で個別にDXに取り組んでいる | 19.4% | 11.0% | 12.5% |
| 取り組んでいない | 19.9% | 15.5% | 22.9% |
| その他 | 2.3% | 7.7% | 8.9% |
これらから、日本のDX化はアメリカ、ドイツと変わらないものの、「部署単位での個別取り組み」の割合が最も高いため、全社的な広がりに課題があることがわかります。
DX化に取り組んでいない理由
同調査において、DXに取り組んでいない日本企業(従業員数100人以下)が挙げた理由の上位は以下の通りです。
- 自社がDXに取り組むメリットがわからない:53.0%
- DXに取り組むための知識や情報が不足している:49.0%
- DXを現場で推進、実行する人材が不足している:37.9%
- DXに取り組むためのスキルが不足している:36.4%
- DXの戦略立案や統括を行う人材が不足している: 31.8%
このように、DX化に取り組まないのは、DXの効果を知らない、対応する人材がいないといった理由が背景にありました。
参照:IPA「DX動向2025」
そもそも「DXとはどういう意味?」という方は以下の記事をご参照ください。具体的な使い方や例文で、DXの意味を分かりやすくお伝えしています。
DX失敗予備軍の特徴チェックリスト
ここまで、よくあるDXの失敗事例、実際の日本企業のDX失敗事例を見てきました。しかし、DXの失敗は、特別な企業だけに起きるものではありません。
そこで最後に、「DX失敗予備軍」の特徴をまとめたチェックリストをご紹介しますので、いくつ当てはまるかぜひ確かめてみてください。
□「とりあえず話題のAIや最新ツールを導入しよう」と思っていないか
□ システム改修やデジタル化が、部分的・特定部署のみでないか
□ 上層部の声掛けだけで、社員の自主性がなく進めてないか
□ 現場の業務フローをわからずに、新しいシステムを押し付けていないか
□ 社内にDXを推進・実行できる人材が不足しているか
□ DXの運用や構築を外部サービスに丸投げしていないか
いかがでしたか?もし2つ以上当てはまるのであれば、「DX失敗予備軍」かもしれません。
しかし、DXは失敗から多くの学びを得られるので、当てはまる項目が多くても、ぜひ「失敗から改善点を見出す」ととらえて成功への道を切り開いていってください。
DXの失敗についてまとめ
DXの失敗を避けるためには、まずDXの定義を正しく理解し、全社員で共通した目標を持つことが重要です。そのうえで、不足するスキルや知識を補う環境を整えることで、失敗を遠ざけ着実な成果を得られます。
もし、DX人材育成の方法に迷ったら、総合的な研修サービスを活用して、自社に最適な人材を柔軟に育成しましょう。