リスキリングに使える助成金等の制度について、企業が従業員にDX研修を受けさせる場合は「人材開発支援助成金」、個人が講座を受講する場合は「教育訓練給付制度」などが主な選択肢です。ただし、企業向けと個人向けでは、助成金の内容や用途などが異なります。
そこでこの記事では、企業・個人向けのリスキリングや助成金の関連制度をまとめました。
生成AIやPythonなどのDX研修に活用するポイント、助成金の対象となりやすい研修や申請の手順も解説しているので、使えるリスキリング助成金などがあるかチェックしてみてください。
リスキリングに使える助成金・給付金一覧
リスキリングに使える主な助成金・給付金を、対象者と利用目的別に比較します。
| リスキリング制度 | 対象者 | リスキリングとして使える場面 | 支援内容 |
|---|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 企業 | 従業員に研修を実施する | 研修費用・訓練中の賃金の一部 |
| 教育訓練給付制度 | 個人(雇用保険の加入者など) | 個人で指定講座を受講する | 受講費用の20〜最大80% |
| 求職者支援制度 | 個人(離職者・一定の要件を満たす在職者) | 無料の職業訓練を受ける | 無料訓練・月10万円の給付 |
| リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 | 個人(転職を目指す在職者など) | 講座受講から転職まで支援を受ける | 受講費用を最大56万円軽減※ |
「助成金」「補助金」「給付金」は、支給対象や申請方法が違います。
また、同じ研修でも、企業が申し込む場合と個人が申し込む場合では利用できる制度が変わるため、まずはどの助成金の制度を利用できるのか確認しましょう。
企業と個人で使える助成金制度はどう違う?

リスキリングとして使える助成金等の支援制度は、どのような目的でリスキリングを行うのかによって利用できる制度が変わります。ここでは、企業と個人によって変わるポイントと、相性の良い助成金制度を紹介します。
| リスキリングの目的・状況 | リスキリングと相性の良い制度 |
|---|---|
| 「企業」が従業員を育成する | 人材開発支援助成金 |
| 「個人」が指定講座を受講する | 教育訓練給付制度 |
| 「個人」が離職中に無料で職業訓練を受ける | 求職者支援制度 |
| 「個人」が転職を前提に学習する | リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 |
企業が従業員にリスキリング研修を受けさせる場合
企業が研修費用を負担し、従業員に業務上必要な知識やスキルを身につけてもらうリスキリングの場合は、人材開発支援助成金を適用できる場合があります。助成金の対象になりやすいのは、以下のような研修です。
- 生成AIやChatGPTの業務活用
- Pythonやデータ分析
- RPAや業務自動化
- Power BIなどのデータ可視化
- クラウドやサイバーセキュリティ
- 建設・製造業向けのCAD・デジタル技術
ただし、リスキリング研修名に「DX」「AI」などの名称が含まれているだけでは、助成金の対象になるとは限りません。自社の業務課題や新規事業との関連性を説明できることが助成金の申請で重要です。
個人が自分でリスキリング講座を受講する場合
個人が自分で受講料を支払い、厚生労働大臣が指定しているリスキリング講座を受講する場合は、教育訓練給付制度を確認しましょう。
ただし、すべてのリスキリング講座や民間スクールが対象になるわけではないため、申し込み前に指定講座かどうかを確認してください。また、雇用保険を受給できない離職者などは、無料の職業訓練を受講できる求職者支援制度も利用できる場合があります。
転職を目的にリスキリングする場合
転職を前提に、キャリア相談、講座受講、転職支援をまとめて受けたい場合は、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業が候補です。ただし、対象は在職中で、雇用主の変更を伴う転職を目指す人です。利用できるリスキリング講座か、公式サイトで最新情報を確認しましょう。
企業向けのリスキリング助成金・補助金

企業向けとして提供されているリスキリングに関する助成金や補助金は、「人材開発支援助成金」です。特に、DXや新規事業に関する訓練では、事業展開等リスキリング支援コースなどが活用候補になります。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、企業が従業員に職務関連の訓練を実施した場合に、訓練費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。DXや新規事業に関する研修では、事業展開等リスキリング支援コースなどが助成金の活用候補になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 従業員に職業訓練を実施する企業 |
| 対象となる研修 | 新規事業、DX、GX、生成AI、Python、データ分析、RPAなどに関する訓練 |
| 対象経費 | 受講料、講師料、教材費など |
| 助成率の目安 | 中小企業は最大75%、大企業は最大60% |
| 賃金助成の目安 | 中小企業は1人1時間あたり最大1,000円、大企業は最大500円 |
| 主な条件 | 研修内容が職務や事業展開と関連していること |
| 申請時期 | 原則として研修開始前に計画届を提出 |
| 申請先 | 事業所を管轄する都道府県労働局など |
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」
助成率や助成額は、企業規模、訓練内容、利用するコースによって異なります。
また、助成金制度の改正によって条件や提出書類が変更される場合があるため、申請前に最新のパンフレットや支給要領を確認してください。
助成金を申請する際には、「生成AIを学ぶ」だけでなく、「生成AIを活用して営業資料や議事録の作成時間を短縮する」など、研修後の業務活用まで整理しておくことが重要です。詳細は、厚生労働省の人材開発支援助成金ページで確認してください。
人材開発支援助成金の概要を知りたい方は、以下の記事もおすすめです。
個人向けのリスキリング助成金・給付金・支援制度

個人向けとして提供されているリスキリングに関する助成金や給付金等の支援制度には、「教育訓練給付制度」「求職者支援制度」「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」など、複数の選択肢があります。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度は、一定の受給要件を満たす人が、厚生労働大臣の指定講座を受講・修了した場合に、受講費用の一部が支給される制度です。給付率はリスキリング講座の種類によって異なり、一般的な資格講座から、IT・専門職向けの長期講座まで幅広く分類されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 雇用保険の加入者または加入していた人 |
| 対象講座 | 厚生労働大臣が指定する教育訓練 (厚生労働省の検索システムから確認可能) |
| 一般教育訓練 | 受講費用の20%、上限10万円 |
| 特定一般教育訓練 | 受講費用の40%、一定条件で50% |
| 専門実践教育訓練 | 受講費用の50%から最大80% |
| 主な条件 | 雇用保険の加入期間などの要件を満たすこと |
| 申請先 | 住所地を管轄するハローワーク |
出典:厚生労働省「教育訓練給付金」
上記のなかでも、専門実践教育訓練は、資格取得や就職、受講後の賃金上昇などの条件を満たすことで、給付率が上がる場合があります。生成AIやPythonなどの講座を検討する場合も、講座名だけで判断せず、厚生労働省の教育訓練講座検索システムで対象講座か確認しましょう。
求職者支援制度
求職者支援制度は、雇用保険を受給できない離職者などが、無料の職業訓練を受けながら再就職を目指す制度です。一定の要件を満たす場合は、訓練期間中に月10万円の給付を受けられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 雇用保険を受給できない離職者、一定収入以下の在職者など |
| 訓練期間 | 主に2〜6か月 |
| 訓練費用 | 無料 |
| 職業訓練受講手当 | 月10万円 |
| 通所手当 | 月額上限42,500円 |
| 寄宿手当 | 月額10,700円 |
| 主な条件 | 求職申込み、受講の必要性、収入・資産要件など |
| 出席要件 | 原則として訓練への出席が必要 |
| 申請先 | 住所地を管轄するハローワーク |
出典:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
対象となるリスキリングの訓練として、Web開発、ビジネスパソコン、デザイン、3次元CADなどがあります。給付金の要件を満たさない場合でも、無料の職業訓練のみ利用できる場合があります。
なお、本人収入や世帯収入、金融資産などの条件があるので、利用を検討する場合は、まずハローワークで受給資格を確認しましょう。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は、転職を目指す在職者に対し、キャリア相談、講座受講、転職支援を一体的に提供する事業です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 転職を目指す在職者 |
| 支援内容 | キャリア相談、リスキリング講座、転職支援 |
| 講座修了時 | 受講費用の1/2相当、上限40万円 |
| 転職後の追加支援 | 1年間継続就業した場合、上限16万円 |
| 最大支援額 | 合計最大56万円 |
| 利用条件 | 採択された補助事業者の講座を受講すること |
| 転職要件 | 雇用主の変更を伴う転職であること |
| 申請先 | 経済産業省に採択された補助事業者 |
出典:厚生労働省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
支援を受けるためには、公式サイトの「補助事業者を探す」ページから対象事業者や講座を検索し、各事業者の案内に沿って申し込みます。受講者が国へ直接申請して給付金を受け取る制度ではなく、補助事業者に補助金が交付されることで、受講者の費用負担が軽減される仕組みです。
なお、公式サイトでは六次公募をもって公募終了、七次公募は未定と案内されています。
そのため、記事公開時点で新たに利用できるかを確認し、受付終了中であれば「過去に実施された代表的な制度」として紹介してください。
助成金の対象になりやすいリスキリング研修とは

リスキリングが助成金の対象になるかは、業務や事業との関連性、研修後の活用方法が明確かどうかによって判断されます。特に企業向けのリスキリング研修では、「何を学ぶか」だけでなく、以下のように「学んだ内容をどの業務で活用するか」を整理しておくことが重要です。
| リスキリング研修の分野 | リスキリング活用の例 |
|---|---|
| 生成AI | 営業資料、議事録、社内文書の作成効率化 |
| Python・データ分析 | 売上分析、需要予測、データ集計の自動化 |
| RPA | 定型的な入力・転記作業の自動化 |
| Power BIなどのBIツール | 経営指標や業務データの可視化 |
| クラウド・セキュリティ | システム基盤の整備や情報漏えい対策 |
| CAD・デジタル技術 | 設計業務の効率化や製造工程の高度化 |
- 職務に必要な知識や技能を扱っている
- 新規事業やDX推進との関係が明確である
- リスキリング研修の目的や到達目標が設定されている
- 受講者、期間、カリキュラムが明確である
- リスキリング受講状況や修了実績を記録できる
たとえば、「生成AIの使い方を学ぶ」ではなく、「生成AIを活用して営業資料の作成時間を月10時間削減する」と設定すると、リスキリング研修の必要性や効果を助成金の申請時に説明しやすくなります。
リスキリングの情報整理が不安な方は、一度ChatGPTやGeminiといった生成AIに指示を出して、助成金申請の土台を作っておくと安心です。
自社向けのリスキリング研修を選べない場合や、カリキュラムを組み立てられない場合には、以下の研修サービスを通じて、人材育成に取り組むのがおすすめです。DXスキルチェックテストで全社員のスキルを可視化できるほか、必要なDX研修を提案してもらえます。
リスキリング研修の方向性や助成金の申請についても相談できるため、具体的なゴールまでKPI・KGIを設定したい企業におすすめです。
リスキリング助成金を申請する流れ
リスキリング助成金の申請の流れは、企業と個人で異なります。
以下に本記事で紹介した各制度の主な手続きの流れをまとめました。
| リスキリング制度 | ①利用前の手続き | ②受講・訓練 | ③受講後の手続き |
|---|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 研修内容・助成要件を確認し、訓練計画を作成 | 従業員が研修を受講 | 研修終了後に支給申請 |
| 教育訓練給付制度 | 受給資格と厚生労働大臣の指定講座かを確認 | 対象講座を受講・修了 | 修了後に給付申請 |
| 求職者支援制度 | ハローワークで相談し、訓練コースに申し込む | 職業訓練を受講し、必要に応じて給付申請 | 受講中も定期的に職業相談・給付申請 |
| リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 | 対象事業者と講座を検索し、各事業者へ申し込む | キャリア相談・講座受講・転職支援 | 転職後の継続就業などを確認 |
なお、人材開発支援助成金は、研修開始後に計画届を提出しても対象にならない場合があります。また、個人向け制度も、受講前にリスキリングの対象講座や受給資格を確認することが重要です。
リスキリング助成金を利用する際の注意点
企業や個人のリスキリングのために助成金等の申請をする際には、以下のポイントに注意してください。
- すべてのリスキリング研修・講座が対象ではない
- 企業向け制度はリスキリング研修開始前の申請が必要な場合がある
- 個人向け制度は指定のリスキリング講座に限られる場合がある
- 受講記録や領収書の保存が必要
- 助成率や上限額は制度改正で変わる可能性がある
- 受付状況や対象事業者を公式サイトで確認する
また、助成金の有無だけでなく、研修後に業務改善やキャリアアップへつながるかも確認しましょう。あわせて、自社向け(自分向け)のリスキリング研修をお探しの方は、助成金の話に加えて以下の記事もチェックしてみてください。
リスキリング助成金についてまとめ
企業のリスキリング研修には人材開発支援助成金、個人のリスキリングのための講座受講には教育訓練給付制度や求職者支援制度が候補になります。ただし、対象条件や申請時期は制度ごとに異なります。研修や講座を申し込む前に、必ず最新の助成金情報を確認しましょう。
また、助成金を受けることだけを目的にせず、リスキリングを事業や個人スキルの成長につなげることも重要です。助成金はもちろん、相性や成長効率の良い研修や講座を探してみてください。