AI技術の急速な発展に伴い、映画の世界でもAIが大きな存在感を放ちはじめました。
AIを題材とした作品、AI技術を用いて制作された作品群は、AIが私たちの生活に深く浸透していることを再認識させてくれます。
この記事では、AI映画の世界について、その歴史や特徴を紐解きながら詳しく解説します。
AIに関連するおすすめ映画もご紹介するので、SF映画ファンはもちろん、AIに興味がある方、最新テクノロジーについて知りたい方もぜひご一読ください。
AI映画とは
AI映画(人工知能映画)とは、AIに関連する映画作品のことです。
一般的には、AIをテーマとした映画、AI技術を活用して制作された映画の2つの側面を持つ映画のことを指します。
AI映画の種類
AIをテーマとした映画は、AIが人間とどのように共存し、社会にどのような影響を与えるのかを描きます。例えば、スティーブン・スピルバーグ監督の『A.I.』は、感情を持つロボットが人間として認められようとする姿を描いた代表的な作品です。
AI技術を活用した映画は、CGや映像制作の過程でAIが活用され、より高度な表現を実現しています。近年は、OpenAIの画像生成AI「DALL-E」を使った『The Frost』なども登場しました。
AI(人工知能)については以下の記事で詳しく解説しています。
AIでできることや活用シーンについてもお伝えしているので、AIの可能性を詳しく知りたい方もぜひご一読ください。
AI映画の魅力
AI映画は、テクノロジーと人間性の融合から生まれる独特な魅力を持っています。
特に、近年のAI映画は、未来社会における人間とAIの共存を描き、その中で根源的かつ普遍的なテーマをもとに、私たちに深い思索を促す点が特徴的です。
例えば、AIが人間の知性を超え、社会に多大な影響を与える可能性、そしてその一方で、AIの発展により失ってしまうもの、失わせるものとは何か。未来への希望と不安、そして人間としてのアイデンティティを問いかけます。
AI映画は、テクノロジーの発展とともに、その表現方法も多様化してきました。
今後もAIとの共生という壮大なテーマは、私たちに深い思索と感動を与えるとともに、新たな芸術を生み出す源泉となることでしょう。
AI映画の歴史
AI(人工知能)が映画に登場する歴史は、SF映画の黎明期にまで遡ります。
初期のAI映画におけるAIはロボットやコンピューターとして表現されており、人間との関係性や倫理的な問題がテーマとして扱われていました。
1920年代~1960年代のAI映画
AIに関連する映画は、映画の黎明期から取り扱われていました。
モノクロ・サイレントムービーで表現されたAIの世界観は、技術的な制約もあり、表現方法も限られていたため、現代のAI映画とは大きく異なっています。
初期のAI映画は、『メトロポリス』のようなドイツ表現主義の影響を受けた作品が多く見られました。なお、このメトロポリスは「SF映画の原点にして頂点」と称されるSF映画黎明期を象徴する傑作として知られています。
公開年度 | 邦題 | 原題 | 製作国 | 登場するAIの名称 |
1927年 | メトロポリス | Metropolis | ドイツ | Maria’s robot double |
1951年 | 地球の静止する日 | The Day the Earth Stood Still | アメリカ | ゴート |
1968年 | 2001年宇宙の旅 | 2001: A Space Odyssey | イギリス・アメリカ | HAL 9000 |
1970年代~1980年代のAI映画
1970年代~1980年代におけるAI映画でのAIは、コンピューターとしての技術面だけではなく、人間と対等に会話するなど感情を持つ存在として描かれるようになります。
特に、1977年の『スター・ウォーズ』をはじめとするSF映画の大ヒットは、SFを大衆文化として定着させるとともに、映画におけるAIの描き方を大きく変えました。それまでは無機質な存在として描かれることが多かったAIが、R2-D2やC-3POのような愛らしいキャラクターとして登場し一躍人気を集めたのです。
公開年度 | 邦題 | 原題 | 製作国 | 登場するAIの名称 |
1977年 | スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望 | Star Wars | アメリカ |
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1982年 | ブレードランナー | Blade Runner | アメリカ | Replicants |
1984年 | ターミネーター | The Terminator | アメリカ |
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1990年代~2015年のAI映画
1990年代に入ると、AI映画におけるAIは、単なる道具や機械を超えて、より複雑な人格や感情を持つ存在として描かれるようになりました。
特に、故スタンリー・キューブリックが長年温めてきた構想を、スティーブン・スピルバーグ監督が引き継いだ『A.I.』は、人間とは何か、生命とは何かという根源的な問いを投げかけ、SF映画の新たな地平を開拓したました。
公開年度 | 邦題 | 原題 | 製作国 | 登場するAIの名称 |
1999年 | マトリックス | The Matrix | アメリカ | Sentinels |
2001年 | A.I | A.I Artificial Intelligence | アメリカ |
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2013年 | her/世界でひとつの彼女 | Her | アメリカ | サマンサ |
2015年以降のAI映画
2015年以降のAI映画では、AIは私たちの生活に身近な存在となり、映画の中でもその役割は多様化しています。人間とAIの共存、AIの倫理的な問題などが、より深く描かれるようになりました。
特に、2022年11月の生成AI登場以降、すべてのショットを画像生成AIで制作した短編映画『The Frost』のような、AIが映像制作の全工程を担う新たなタイプの作品が誕生したのはAI映画史の新章の幕開けといえるでしょう。
公開年度 | 邦題 | 原題 | 製作国 | 登場するAIの名称 |
2017年 | ブレードランナー 2049 | Blade Runner 2049 | アメリカ | Replicants |
2019年 | ターミネーター:ニュー・フェイト | Terminator: Dark Fate | アメリカ |
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2023年 | The Frost | The Frost | アメリカ | ― |
生成AIは、ニューラルネットワークという人間の脳の働きを模倣した技術を基盤とし、新たなコンテンツを生成します。ニューラルネットワークについては以下の記事で分かりやすく解説しているので、生成AIを使った映画に興味がある方はぜひご一読ください。
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AIをテーマにしたおすすめ映画3選
まずは、AIをテーマにしたおすすめ映画を3選ご紹介します。
これらの作品は、AIと人間の関係性、特に人間の存在意義や倫理といった根源的な問いを深く掘り下げています。AIを通じて、人間の心の奥底や社会のあり方について深く考えさせられる作品ばかりです。
①A.I.
スタンリー・キューブリックが企画し、スティーブン・スピルバーグが監督した映画『A.I.』は、未来の人間とAIの関係を描く感動的なAI映画です。
高度なAI技術が進んだ世界で、「愛」をプログラムされたアンドロイドの少年デイビッドが、家族の愛情を求めて旅を続ける姿が描かれており、その切なくも純粋な冒険は、愛とは何か、人間らしさとは何かを切々と問いかけてきます。
ヘイリー・ジョエル・オスメントが演じるデイビッドの無垢な表情と、ジュード・ロウが演じるジョーの洗練されたキャラクターが生み出す絶妙な対比も見どころ。技術が進化する中で、私たちが失いたくないものを深く考えさせられる一本です。
②her/世界でひとつの彼女
「AIとの愛、それは現実か幻想か」をテーマにした本作は、AIとの恋愛という新しいテーマを見事に描き出した愛の本質を問いかける映画です。
孤独な男セオドアが出会ったのは、心温まる声を持つ人工知能OS、サマンサ。サマンサは単なるプログラムではなく、まるで生きているかのようにセオドアと心を通わせ、共に成長します。その過程での喜びや葛藤、そして切ない別れは観る者の心を揺さぶり、愛とは何かについて深く考えさせます。
ホアキン・フェニックスが演じるセオドアの繊細な演技と、スカーレット・ヨハンソンが美しい声で命を吹き込むサマンサとの掛け合いが、二人の間に生まれる感情の深さを際立たせています。AIが私たちの生活に深く関わる未来を想像させ、人間とAIの新しい関係や愛の形を考えさせてくれる名作です。
③ブレードランナー 2049
本作は、1982年に大ヒットを記録した映画「ブレードランナー」の続編で、2049年、高度な人工知能を持つレプリカントと呼ばれる人造人間が、人間社会に深く溶け込んでいる世界を舞台に物語は展開します。
ドゥニ・ビルヌーブ監督による緻密な演出と、ロジャー・ディーキンスによる美しい映像が、近未来の荒廃した世界を鮮烈に描写。雨に濡れるネオン街や廃墟と化した高層ビル、そこで生きる人々やレプリカントの姿は観る者の心に深く響きます。
SFやAIを超越し、人間とは何か、生命とは何かという深いテーマを問いかける哲学的な作品で、レプリカントたちの感情や自我、人間との関係性は、観る者に感動と共感をもたらしてくれるでしょう。
AIを使ったおすすめ映画3選
近年、映画制作の現場ではAI技術が急速に発展し、その活用範囲の広がりは目覚ましいものがあります。以下では、そんなAI技術が革新的な映像を生み出し、注目を集めた話題の3作品をご紹介しましょう。
①The Frost
すべての映像がAIによって生成された短編映画『The Frost』。デトロイトの映像制作会社Waymarkが、画像生成AIのDALL-E 2とアニメーションツールD-IDを駆使して作り上げた12分間の世界観は、AIがもたらす新たな表現の可能性を提示しています。
脚本をAIに与え、生成された画像を繋ぎ合わせることで生まれた映像は、どこか不気味ながらも独特の美しさで観客を魅了。まるで20世紀に発表された手塚治虫の実験アニメーションのような、懐かしくも斬新な感覚を観る者に与えます。
さらに、AIが生成したキャラクターは、一貫性のない風貌で、ストーリーを追うのが難解な側面も。本作は、AIが映像制作の分野でどのような可能性を秘めているのか、そして、その技術がどのように活用されるべきかという問いも投げかけています。
②Gemini Man
ウィル・スミスが演じる伝説の暗殺者が、自分自身の25歳前のクローンと対峙する映画『ジェミニマン』。本作が画期的なのは、AI技術によってウィル・スミスを若返らせた点にあります。
作品内で、AIはウィル・スミスの膨大な映像データを学習し、まるで本人がそこにいるかのようなリアルなデジタルヒューマンを創り出しました。従来の特殊メイクやCGでは実現できなかった、肌の質感や表情の微妙な変化まで再現し、まるで双子のような二人の姿に数多くの方が魅了されました。
この映画は、AI技術が映画制作に革新をもたらしたことを如実に示しています。AIによる若返りは、映画業界の新たな可能性を切り開き、より表現豊かな映像世界を生み出すでしょう。
③The Irishman
ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが共演し話題を呼んだ映画『アイリッシュマン』では、AI技術を駆使して俳優陣がまるで時間を遡ったかのように若返る驚異の映像体験を楽しめます。
本作では、AIが膨大な過去の映像データを分析し、俳優陣の若かりし頃の姿を驚くほど精密に再現。その再現度は、表情や細かな仕草に至るまでリアルで生き生きとしており、俳優陣の魅力を余すところなく引き出しました。
この革新的な技術により、デ・ニーロやパチーノは長い年月をまたぐ物語を一役で見事に演じ切り、観る者を深く物語の世界へと引き込むことに成功しています。
生成AIの登場による映画界の変化
近年、生成AIの登場は、映画制作のあり方を根底から変えつつあります。脚本執筆から撮影、編集、プロモーションに至るまで、AIは多岐にわたる分野で活用され、映画制作の効率化や表現の多様化を促進しています。
生成AIの活用シーン
生成AIは、映画制作のあらゆる段階において、その可能性を大きく広げています。例えば、脚本執筆においては、自然言語処理技術を活用したAIが、プロットやキャラクターの対話の自動生成を実現しています。
撮影現場では、AI制御のカメラやドローンが、従来技術では実現できなかった構図や視点を実現し、映像表現の幅を大きく広げはじめました。また、AIによる観客データの分析は、ターゲット層に合わせた細やかなマーケティング戦略を実現し、映画の興行収入向上に寄与しています。
AIがもたらす課題と倫理的な問題
一方で、生成AIの急速な発展は、新たな課題をもたらしています。
例えば、AIが生成したコンテンツの著作権侵害や倫理的な問題、AIに頼りすぎることで生じる人間の創造性の低下、そしてAIによる効率化が人間の雇用を奪う可能性などが挙げられます。
AIは既存概念を覆す魅力的なツールですが、あくまで人間が創造性を発揮するためのサポートとして活用するべきでしょう。AIの活用と同時に、人間の感性や創造性を尊重し、両者が共存できるような映画制作のあり方を模索していくことが重要です。
AI映画についてまとめ
近年、生成AIの登場により、映画制作は新たなステージへ突入しました。
今後、AIは、脚本執筆から編集、プロモーションまで、多岐にわたる分野で活用され、映画制作の効率化や表現の多様化に貢献していくことでしょう。
一方で、生成AIの倫理的な問題は、映画制作の未来を左右する重要な課題です。
生成AIの安全かつ倫理的な使い方を学びたい方は、生成AIセミナーで具体的な事例や最新情報に触れることをおすすめします。
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