「DXを進めたいが、担える人材が不足していて手が回らない」といった悩みを抱える企業が増えています。DX人材不足は一部の企業だけの問題ではなく、業種・規模を問わず日本全体の課題となっているのです。
この記事では、DX人材不足の現状や原因を整理したうえで、具体的な対処法まで解説します。自社のDX推進に向けて、ぜひ参考にしてください。
そもそもDXとは
DXとは、データやデジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革し、企業の競争力を高めていく取り組みのことです。『デジタル化』と混同されがちですが、単にアナログ業務をデジタルに置き換えるだけでなく、組織の文化や構造そのものを変えていく点がDXの本質です。
経済産業省は2018年に公表したガイドラインのなかで、DXを「データとデジタル技術を活用して製品・サービス・ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。こうした変革を担う人材がDX人材ですが、現在はその不足が深刻な課題となっています。
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また、DX推進については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらも合わせて参考にしてください。
日本のDX人材不足の現状
DX人材とは、デジタル技術やデータを活用して業務や組織を変革するスキルを持つ人材のことです。DX推進の戦略を設計するリーダー的な役割から、現場でデジタルツールを定着させる実行役まで、さまざまな役割が含まれます。現在、こうしたDX人材の不足が日本企業共通の課題となっており、DXを進めたくても担い手がいないという状況が広がっています。
DXに関する調査から見えるDX人材不足
DX人材不足は、複数の調査データからも明らかになっています。現場の実感としてだけでなく、数値でも人材不足の深刻な状況が裏付けられているのです。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2024年6月に発表した『DX動向2024調査』によると、DX推進に必要な人材が「大幅に不足している」と回答した企業は62.1%にのぼりました。同調査を開始した2021年度時点では30.6%だったことを踏まえると、わずか数年で不足感が倍増したことになります。「大幅に不足」と答えた企業が過半数を占めるのは、調査開始以降はじめてのことです。
参考:DX 動向 2024 – 深刻化する DX を推進する人材不足と課題
また、帝国データバンクが2026年3月に発表した調査では、90.2%の企業が「人材強化」を優先的な経営課題として挙げています。企業規模別に見ると大企業では98.2%、中小企業でも94.0%が同様の回答をしており、規模を問わず人材不足が経営上の喫緊の課題として認識されていることがわかります。
2030年には約79万人ものIT人材が不足する見立て
今後さらに深刻になるのが、DXをはじめとするIT人材の長期的な不足です。
経済産業省が公表した『IT人材需給に関する調査』では、IT需要の伸びが高い水準で推移した場合、2030年には約79万人ものIT人材が不足すると試算されています。この不足数にはAIやIoT・ビッグデータといった先端技術を扱えるDX人材が多く含まれており、従来型のシステム開発を担う人材とは求められるスキルが異なる点も深刻な問題の一つです。
社内リスキリングを実施している企業は7.9%にとどまるというデータもあり、DX人材の教育・育成面でも不足が顕著で、課題が山積みとなっています。DX推進の意欲があっても、それを担える人材の不足が続く見通しです。
DX人材不足が起きている3つの原因

DX人材不足が起きている主な原因として、以下の3つが挙げられます。
- 労働人口の減少
- デジタル化需要の急速な拡大
- 社内教育に取り組めていない
ここでは上記3つの原因についてそれぞれ解説します。
①労働人口の減少
DX人材不足の背景として外せないのが、少子高齢化に伴う労働人口の減少です。日本全体で働き手が減り続けているため、あらゆる業界で人材不足が深刻化しており、DX領域も例外ではありません。
特に影響が大きいのは、AIやIoTといった先端技術を扱える人材が不足している点です。従来型のITスキルを持つ人材が先端技術に対応できるようになるには時間がかかるため、即戦力となるDX人材の不足につながっています。加えて、古い基幹システムの知識を持つベテラン世代が退職していく流れも進んでおり、技術の継承と新領域への対応という二重の課題が重なっています。
労働人口の減少は、DX人材不足をより深刻にする根本的な要因の一つといえるでしょう。
②デジタル化需要の急速な拡大
労働人口が減少するなかで、DXへの需要は勢いを増しています。業務のオンライン化にとどまらず、データ活用や生成AIの普及により、企業が求めるデジタルスキルの幅は広がる一方で、それを持つ人材は不足しているのが現状です。
求められるスキルが多様化するほど、対応できる人材不足の課題は大きくなる一方となっているのです。
③社内教育に取り組めていない
DX人材不足の原因の一つとして、企業側の育成体制の問題も挙げられます。日本では長年、システム開発や運用をベンダー企業に委託する慣行が根付いており、社内のDX人材が不足しやすい環境が続いてきたのです。
育成の必要性が認識されてきた現在でも、「学習時間が不足している」「業務が忙しくてリスキリングまで手が回らない」といった声は多く聞かれます。DX人材不足を解消するためには、外部採用だけに頼らず、社内での人材育成体制を整えることが大切です。
DX推進で求められる人材

DXを推進するには特定の部署や一部の専門家だけでなく、役割に応じたさまざまな人材が連携して動く必要があり、どの役割でも人材不足は致命的です。経済産業省・IPAが策定した『DX推進スキル標準(DSS-P)』では、DX人材を次の5種類に分類しています。
| DX人材類型 | 主な役割 |
|---|---|
| ビジネスアーキテクト | 経営戦略とデジタル技術を結びつけ、DXの方向性を設計・推進する |
| デザイナー | ユーザー視点でサービスや製品のデザインを策定する |
| データサイエンティスト | データ分析・AI活用の仕組みを設計・実装・運用する |
| ソフトウェアエンジニア | DXに必要なシステムやソフトウェアの構築・運用を担う |
| サイバーセキュリティ | デジタル環境のセキュリティリスクを管理・抑制する |
これらはそれぞれが独立して機能するものではなく、相互に連携することでDXが推進できるため、一つの役割が不足するだけで全体が滞ります。特にビジネスアーキテクトは、社内外の関係者を巻き込みながらプロジェクト全体を動かす役割を担うため、DX人材不足のなかでも確保が難しい職種の一つとされています。
DXを組織全体で推進するためには、不足している役割を把握しながら、多様な人材をバランスよく配置していくことが大切です。
また、DX人材育成に必要なポイントは以下の記事で詳しく解説しています。これからDX人材育成に取り組む場合は、ぜひこちらも合わせて参考にしてください。
DX人材不足を解消する3つの対処法
DX人材不足を解消するために有効な対処法として、以下の3つの方法が挙げられます。
- DX人材育成の研修・セミナーを実施する
- アウトソーシングを活用する
- DX人材を採用する
ここでは上記3つの対処法についてそれぞれ解説します。
①DX人材育成の研修・セミナーを実施する

DX人材不足への対処として、中長期的に効果が期待できるのが社内人材の育成です。すでに自社の業務を熟知している社員がデジタルスキルを身につければ、外部採用だけでは不足しがちな現場に即した即戦力として活躍できます。
ただし、社内だけでDX教育を完結させるのはノウハウや時間が不足しがちで、ハードルが高いのも事実です。そこで活用したいのが、外部の研修・人材育成プログラムです。
例えばGETT Proskillが提供している『DX研修・人材育成サービス』では、社員のDXレベルを可視化したうえで、現場で実践できるスキル習得を目的としたハンズオン研修が受けられます。また、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の対象サービスであるため、費用負担を抑えながら人材育成に取り組めます。
社内のDX人材の育成を検討している方は、ぜひ以下の詳細を確認してみてください。
②アウトソーシングを活用する
社内のDX人材が不足している場合、外部の専門家やベンダー企業にDX推進の一部を委託するアウトソーシングも有効な選択肢です。社内の人材不足を補いながら、スピード感をもってDXを進められます。
アウトソーシングを活用すれば、DX戦略の立案のような社内だけでは手が不足しがちな業務から、システム構築・運用保守のような実務まで幅広く対応できます。まずは範囲を絞って部分的に委託し、社内の理解が深まるにつれて対象を広げていくやり方も可能です。ただし、外部委託のみに依存し続けると社内にノウハウが蓄積されず人材不足が長期化するリスクがあるため、アウトソーシングは社内のDX人材育成と並行して進めることをおすすめします。
③DX人材を採用する
即戦力となるDX人材を外部から採用する方法も、DX人材不足への対処として有効です。すでにスキルを持つDX人材を採用できれば、育成期間を必要とせず、短期間でDX推進を加速できます。
ただし、DX人材の需要は高く、採用競争が激しいため、人材不足を採用だけで解消するのは容易ではありません。待遇や職場環境の魅力を伝えられなければ優秀な候補者の確保は難しく、人材不足が長引いてしまう可能性もあるでしょう。
また、自社にどのようなスキルを持つ人材が必要かを明確にしておかないと、採用後のミスマッチで人材不足が解消されないリスクもあります。DX人材採用に取り組む際は、求める人物像と役割をあらかじめ具体的に決めておくことが大切です。
DX人材不足まとめ
DX人材の不足は、現在多くの企業が直面している課題です。2030年には約79万人のIT人材が不足するという試算もあり、早めの対策が求められます。まずは自社に必要なDX人材の役割と不足の原因を正確に把握することが大切です。
そのうえでDX人材不足の解消に向けて、社内研修による人材育成・アウトソーシングの活用・外部採用などの対処法を自社の状況に合わせて組み合わせていきましょう。