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【2026】建設DXとは?必要な背景と費用相場・導入ステップなどを紹介

建設DXとは、AI・IoT・ICTといったデジタル技術を活用し、建設業の生産プロセスそのものを変革する取り組みのことです。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、工期は据え置かれたまま残業だけを削減しなければならない状況が生まれたことで、建設DXの重要性が年々高まっています。

しかし「ICT建機や電子契約などがすべて同じ建設DXとして語られていて比較できない」「自社は何から着手すべきなのか」と迷う担当者の方も多いでしょう。ベンダーの提案資料には成功事例しか掲載されておらず、建設DXの失敗パターンや隠れコストが見えないというケースも少なくありません。

そこで、本記事では建設DXの定義や必要になる背景、領域別の全体像、導入事例などを解説します。最後まで読めば社内で建設DXの必要性を説明できる根拠が揃うので、ぜひ参考にしてください。

建設DXとは?

建設DXとは、建設業界においてAI・IoT・ICTなどのデジタル技術を活用し、生産プロセスを最適化・効率化する取り組みのことです。デジタル技術を導入すること自体が目的ではなく、仕事の進め方そのものを作り変える点に主眼が置かれています。

ここで押さえておきたいのが、建設DXを「デジタル化」と切り分けて捉える視点です。

現場でタブレットを使って図面を閲覧する行為は、紙をデータに置き換えただけの段階にとどまります。そのデータをクラウドで一元管理し、事務所・現場・協力会社が同じ情報をリアルタイムで参照し、報告書の作成という業務自体をなくす。ここまで到達して初めて建設DXと呼べる領域に入るのです。

つまり建設DXの目的は、デジタルを導入することではなく業務の流れを軽くすることにあります。この順番を取り違えないことが、建設DX成功の第一歩といえるでしょう。

なお、DXという言葉自体の定義や成り立ちから押さえたい方は、下の記事も参考にしてみてください。

【2026】DX化とは?簡単にわかりやすく解説!デメリット・Xの意味・具体的な事例も紹介

建設DXが必要な背景

建設DXの検討が始まるきっかけは、大きく3つの構造的な課題に整理できます。いずれも一過性の流行ではなく、業界全体が避けて通れない変化です。

建設DXが必要な背景 具体的な状況 建設DXが担う役割
2024年問題 2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、原則月45時間・年360時間の枠が課された 1人あたりの生産性向上
技能者の高齢化 熟練者が培った経験やノウハウを次世代へ引き継ぐ時間的猶予がない データ化による技術継承
若手の離職と採用難 紙と電話中心の職場がデジタルネイティブ世代に敬遠される。建設業は正社員の不足割合が6割を超える業界の一つ 働き方の刷新による採用力強化

3つの背景に共通しているのは、いずれも社内の努力だけでは解消できない外部環境の変化だという点です。工期は発注者が決め、労働時間は法律が定め、労働人口は人口動態が規定します。

自社が動かせる変数は、限られた人員で同じ成果を出すための業務プロセスそのものしか残されていません。従来の建設業は、この制約を人の頑張りという可変要素で吸収してきました。その余白が制度と人口の両面から失われた以上、建設DXを活用して仕事の進め方を作り替える以外に選択肢はないといえるでしょう。

建設DXの全体像|自社の課題とデジタル技術の対応表

建設DXという言葉を、比較可能な5つの領域に分解して整理します。建設DXは領域ごとに解決できる課題も導入難易度も異なるため、自社の課題と照らし合わせて選ぶことが重要です。

建設DXの主な領域 建設DXの解決課題 主な対象 導入難易度 建設DXの効果が出るまで
①施工管理アプリ・クラウド 写真整理・日報・図面共有の手間 現場全員 数か月
②BIM/CIM・3Dモデル 手戻り・干渉・情報の分断 設計・施工管理 年単位
③ICT建機・ドローン測量 測量・出来形管理の工数 土工中心 半年〜
④電子契約・バックオフィス 契約・労務書類・原価管理 本社・協力会社 数か月
⑤AI・IoT・遠隔臨場 安全管理・移動時間・省人化 全社(先進領域) 中長期

5つの領域は「既存業務の負荷を減らすもの」と「仕事の仕組みそのものを組み替えるもの」に大別できます。

前者にあたる①と④は業務フローを大きく壊さずに始められ、効果も削減時間や金額として短期間で表れます。一方②③⑤は、人材育成や社内ルールの再構築を伴うため、建設DXに関する投資判断の性格が設備投資に近づきます。

ここで注意したいのは、建設DXで見極めるべきは領域の優劣ではなく自社の工種との適合だという点です。土工量の少ない企業がICT建機を検討しても回収は見込めません。

建設DXにおける最初の意思決定は、どの技術が優れているかではなく、自社のどの業務が最も重いかを見極めることにあります。難易度が低く効果が可視化しやすい領域から着手し、実績を土台に次の建設DX投資へつなげる順番が現実的でしょう。

建設DXの費用相場

建設DXの費用相場

建設DXの費用は、初期費用・月額費用・隠れコストの3層で捉えると全体像が把握しやすくなります。中心となる施工管理システムの月額費用は9,000〜20,000円前後が一つの相場とされ、有料版全体では初期費用が数万〜数十万円、月額はID数・現場数・機能オプションに応じた課金という形が一般的です。

建設DXの課金モデル 特徴 公開されている価格例
アカウント数別プラン 使用人数に応じて段階的に上昇 月額22,000円/33,000円/55,000円+初期費用一律11万円
人数無制限の定額型 何人使っても同額。協力会社を巻き込みやすい 初期費用0円・月額10,800円(税込11,880円)
ライセンス(ID)課金型 利用人数の分だけ積み上がる ベーシック版 年31,680円(税込)/最小5ライセンスから
見積もり制 価格非公開で、規模に応じて個別提示 初期費用無料だが月額は要見積もり

建設DXにおいて比較すべきは月額料金ではなく、運用全体で発生するトータルコストです。月額以外に発生する費用としては以下の項目が挙げられます。

  • アカウント作成や権限設定などの初期設定費用
  • 既存のExcelや旧システムからのデータ移行費用
  • 操作説明会や運用ルール策定を含む導入支援・研修費用
  • 保守・サポート費用
  • ID追加やストレージ容量追加
  • API連携
  • 安全書類や遠隔臨場といったオプションの追加料金

特に見落とされやすいのが二重入力の人件費です。アプリが原価管理や請求システムと連携できない場合、現場で入力した日報や人工を事務所で再度手入力する作業が発生し続けます。写真や図面のストレージに上限がある場合は、定期的にデータを退避させる工数も生じるでしょう。

見積書を受け取った際は、記載された金額以外に発生する建設DXの費用をすべて確認しておくことをおすすめします。

無料トライアル・無料プランがある建設DXツールの見極め方

多くの建設DXツールには無料トライアルや無料プランが用意されているため、契約前に実際の使用感を確認できます。ただし漠然と建設DXツールに触るだけでは判断材料になりません。トライアル期間中に確認すべき項目を、あらかじめ決めておくことが重要です。

建設DXツールのチェック項目 確認方法
現場の電波環境 地下や山間部でオフライン利用が可能か、同期の挙動はどうか
ITが苦手な人の操作性 最も苦手な層に実際に触ってもらう
二重入力の有無 既存の原価管理・請求システムと連携できるか
容量とID追加の条件 写真容量の上限、増員時の追加単価
サポートの反応速度 問い合わせへの返信スピードと内容の的確さ

特に重要なのは建設DXツールの操作性の検証です。ITに慣れた社員だけで試して結論を出すと、本番展開の段階で必ずつまずきます。

また無料プランについては、どこまでが無料なのかを必ず確認しましょう。人数や現場数、保存容量に制限があり、本格運用に移行すると有料になるケースがほとんどです。トライアルはツールを試す場であると同時に、そのベンダーの対応品質を見極める機会でもあります。

建設DXと相性の良い補助金・助成金

建設DXに活用できる公的支援は、ツール導入を支える制度と人材育成を支える制度の2種類に分けて整理すると把握しやすくなります。

建設DXで活用できる制度 主な対象 建設DXでの使いどころ
デジタル化・AI導入補助金 ITツール、パソコン・タブレットなど 施工管理アプリ、電子契約、原価管理システムなどの導入
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 機械装置・システム構築費など ICT建機、3D測量機器などの設備投資
自治体独自の助成金 地域の実情に応じた設備投資・デジタル化支援など 地域単位の支援

建設DXツール導入側では、2026年度に名称変更された「デジタル化・AI導入補助金」と、新事業進出補助金と統合された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」が代表格です。

一方、見落とされやすいのが人材育成側の支援で、厚生労働省の人材開発支援助成金が該当します。建設DXはツールを買って終わりではなく、使いこなせる人材を育てて初めて機能するため、両輪で捉える視点が有効でしょう。

いずれの制度も、事前のアカウント取得や計画届の提出が前提となります。制度は年度ごとに統廃合や要件変更が繰り返されるため、過去の情報や申請実績をそのまま前提にせず、公募開始を待たずに最新の要領を確認しながら逆算して準備を進めることが重要です。

制度の詳細や申請の流れについては、下の記事も参考にしてみてください。

【2026】人材開発支援助成金はDX人材育成に使える?対象研修・助成額・申請方法を解説

【規模別】建設DXの導入事例4選

【規模別】建設DXの導入事例

建設DXのメリットやツール、費用相場を紹介しましたが、それだけでは自社で導入する場面がイメージできないかもしれません。ここでは、実際に建設DXを導入した企業の事例を4つ紹介します。具体的な企業名や成果も載せているので、自社の現状と照らし合わせながら読み進めてください。

企業名 導入したもの 主な効果
株式会社笹川組 ANDPAD(黒板・図面)
  • 写真整理の手間を削減
  • 検査報告が数日→1時間以内
佐藤工業株式会社 ANDPAD請求管理
  • 経理業務を月50時間削減
  • 査定が3〜5日→半日
株式会社三友組 コマツのICTソリューション 法枠工で3次元起工測量・出来形測量を実施(試行現場)
株式会社田中組 グリーンサイト 労務安全書類業務を約8割削減

黒板写真と仕上げ検査を大幅に時短|笹川組

滋賀県大津市の笹川組は、社員54人(うち工事部36人)の地域ゼネコンです。2024年問題を見据えてDXを検討したものの、当初試した複数のツールは現場の利用頻度が上がらず、カスタマイズもできないため定着しませんでした。

2023年から施工管理アプリの黒板・図面機能を導入。撮影前に黒板を準備・保存できるようになり、書いては消す作業が不要になったうえ、1〜2時間かけていた写真整理の手間もかなり減ったとのことです。

効果がより明確なのが仕上げ検査です。従来は紙の図面に走り書きし、100項目に及ぶ指摘を清書して協力会社に振り分けていましたが、導入後は検査終了後1時間もあれば是正指示のまとめが完了。以前は数日かかっていたため、大きな変化といえるでしょう。

経理業務を月50時間削減|佐藤工業

栃木県壬生町の佐藤工業は社員45人。民間・公共比率5:5で幅広い工事を手がける会社で、現場ではなくバックオフィス領域のDX事例です。

導入前は請求書の受領から査定、保管までをすべて紙で処理。約300枚が毎月郵送で届き、経理担当が現場ごとに振り分け、現場監督は会社まで取りに行って3〜5日かけて査定していました。

請求管理システムの導入後、経理担当の業務は金額と業者の目視確認だけになり、部署全体で月50時間ほどの削減を実現。現場監督側も査定業務がほぼ半日で完了するようになりました。協力会社の利用率も8割を超えています。

なお選定の決め手は、UIの見やすさと建設業に特化している点だったとのことです。

3次元起工測量で工期短縮に挑戦|三友組

新潟県の三友組が手がけたのは、斜面をコンクリートで覆う法面保護工事です。観光地付近の現場で紅葉シーズンにかかるため、渋滞を防ぐべく工期短縮が求められていました。

発注者から法枠工でのICT活用を試行現場として打診されたこともあり、3次元起工測量および出来形測量を実施。起伏の多い自然法面については、法枠形状の3次元設計データを作成しました。

参考になるのは担当者の心境です。現場代理人としては初めての現場で不安もあったものの、面識のあった建機メーカーの営業からアドバイスをもらいながら進めたと語られています。社内に前例がない場合、ベンダーの伴走体制が成否を分ける好例といえるでしょう。

労務安全書類業務を約8割削減|田中組

創業100年を超え、北海道の建設業界を牽引する田中組は、全社的なDX推進の一環として2018年にグリーンサイトを導入しました。導入前は膨大な紙の労務安全書類の管理が、現場担当者の大きな負担となっていたといいます。

その結果、労務安全書類業務の時間を約80%削減。紙で運用していた頃は期限切れ書類の再提出を促すために1枚ずつチェックする必要があり大変だったという声もあり、有効期限が近づくとアラートが出るようになったことで、この業務が劇的に減ったとのことです。

「現場を巻き込む前に、まず本社の書類業務から着実な一歩を踏み出す」と教えてくれる事例です。

建設DXが失敗する5つのパターン

ベンダーの提案資料に記載されることの少ない失敗パターンを整理します。実際の現場で起きている典型例は、次の5つに集約されます。

失敗パターン 現場で起きていること 回避策
目的の取り違え 何のための取り組みかを説明できず、現場の協力を得られない 課題の実測を先に行う
二重入力 紙とアプリの両方に入力することになり、かえって残業が増える 紙をやめる期限を先に決める
ルール・教育不足 入力方法が担当者ごとに異なり、蓄積したデータが活用できない A4一枚の運用ルール
現場が使わない 一部の担当者だけの道具になり、やがて形骸化する 使う理由を腹落ちさせる
機能の盛りすぎ 高額プランを契約したが、一部の機能しか使われない 最初は機能を一部に絞る

これらに共通しているのは、失敗の原因がツールの性能ではなく、導入側の設計にあるという点です。目的が曖昧なまま始まり、移行の期限を切らず、運用ルールを定めず、使う側の納得を得ないまま機能だけを増やす。いずれも導入前の意思決定で防げるものであり、予算をかけずに回避できる失敗です。

言い換えれば、建設DXの成否を分けるのは技術ではなく、それを動かす人と仕組みだということです。「ツールを入れても現場で使われない」「一部の担当者だけで取り組みが止まる」といった状態から抜け出すには、推進役自身が進め方の型を持っておく必要があります。

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現場が動く建設DXの進め方5ステップ

現場が動く建設DXの進め方

失敗パターンを裏返すと、そのまま成功の手順になります。建設DXは、実測から標準化までを5つのステップに分けて進めると、稟議から逆算した計画が立てやすくなります。

ステップ やること 成果物 目安期間
1. 実測 現場の作業時間を1週間記録し、負荷の所在を数値化する 課題リストと時間データ 1〜2週間
2. 絞り込み 頻度×時間×嫌われ度で対象領域を1つに決める 対象領域の決定 1週間
3. パイロット 1現場・数ライセンスで試し、導入前と同じ方法で測り直す Before/Afterの数値 1〜3か月
4. 巻き込み 相手の利益として伝え、覚える操作は1つに絞る 現場の協力体制 ステップ3と並行
5. 標準化 運用ルールを定め、協力会社と全現場へ展開する A4一枚の運用ルール 3か月〜

この5ステップを貫いているのは、主観を数値に置き換え、範囲を絞って検証し、得られた事実を根拠に次へ進むという考え方です。漠然とした忙しさを時間として計測することで打ち手が定まり、1現場に限定することで失敗の代償が小さくなり、前後の比較値が社内説得の材料に変わります。

注目すべきは、この過程で専門的なIT知識を要する場面が一つも含まれていない点でしょう。求められるのは、現場の実態を数値へ、専門用語を職人の言葉へ、そして現場の成果を経営層に届く表現へと置き換える力です。

建設DXの推進役に必要なのはIT知識ではなく現場の翻訳力であり、現場を長年見てきた人材ほどこの役割に適しているといえます。

建設DXに関するまとめ

今回は建設DXの定義や必要になる背景、領域別の全体像、費用相場、補助金、導入事例、失敗パターン、進め方の5ステップまでを解説しました。

建設DXとは、デジタルで仕事の仕組みそのものを変える取り組みであり、ツールを配布することではありません。その背景には2024年問題・技能者の高齢化・採用難という構造的な課題があり、中堅ゼネコンにとっての現実的な入口は施工管理アプリと電子契約の2領域です。費用は月額だけでなく初期設定や教育まで含めて算出し、ツール導入と人材育成の双方に使える公的支援も確認しておきましょう。

なお失敗要因は技術ではなく、人と運用にあります。測る・絞る・試す・巻き込む・標準化するという順番を守り、自社で最も負担の大きい業務を1つ選んで、1現場から小さく始めてください。

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