日本の農業は、人手不足などの問題を抱えています。そんな中、農業にAIを導入しようとする動きが高まっている傾向にあると言えます。そこで今回は、AIを農業に活用した事例や農業にAIを導入するメリット・デメリットなどを詳しく紹介していきます。
農業に使う事ができるAIとは
AI(人工知能)とは、基本的に人の手によって開発された知能を持っているシステムやソフトウェアの事を指します。AIは自ら学習し、人間のように認識や理解ができるのが大きな特徴です。学習させる事で計画の立案や問題の解決といった知的な行動も可能となります。AIには様々な能力があり、以下に紹介するAIの能力は、農業の分野でも使用する事ができます。
機械を制御できる能力
AIにデータ学習を行わせる事で、機械も簡単に操作できるようになります。工場で製品などを作る産業用ロボットや車の自動運転技術などが例として挙げられます。
画像を認識する能力
AIには、人やもの、言葉などを画像から認識・判別する事ができる技術があります。例えば、人の顔を認識して入場の可否を判断できるシステムはAIの画像認識技術が活かされています。
音声を認識する能力
AIの音声認識能力では、特定の人が発する言葉を検出する事ができます。この技術は私たちの日常生活の中でも活かされています。一つの例としては、AI搭載のスピーカーに話しかける事で天気を検索してくれたり、テレビの電源をONにする事ができます。
未来を予測する能力
天気や株価など予測が必要なものにもAIの技術が導入されています。過去のデータを分析・解析して商品や製品、サービスの需要や売上を予測する事も可能です。
農業にAIを導入した事例をいくつか紹介
ここでは、農業にAIを導入した事例を紹介していきます。
ロボットを使った野菜の収穫
自動車向けパーツの開発・製造などを行っているデンソーでは、AIが組み込まれている野菜収穫ロボットを開発し、収穫にかかるコストのカットや農家の負担軽減など一定の成果を得ています。このロボットを導入する事でバッテリーが切れない限り、24時間いつでも人に代わって収穫の作業を行ってくれるのです。車のパーツで培われたノウハウを活用し、実を落とさずに確実に収穫できるような設計となっています。
撮影した葉の画像を解析する事で収穫量を予測できるサービス
「IROHA」という解析サービスでは、ドロンで撮影した葉の画像をAIに分析させる事で、収穫量を予測する取り組みが行われています。個人又は小売事業者に対して直接野菜や果物を納品する場合は、決められた量を正確に納める事が大切です。そのため生産者としては、あらかじめ収穫量を予測してく事が求められてきます。しかし、従来は農家の勘だけで収穫量を予測する事が一般的でした。この解析サービスでは、一つ一つの作物の成長具合を的確に把握してくれるため、より精度の高い収穫量の予測を実現させています。
AIで大規模工場を自動化
株式会社スプレッドでは、AIを導入した生産管理技術を活用する事で、大規模な植物工場における安定稼働を実現しています。センサーによって収集された膨大な栽培データから最適な栽培状況を導き出した上で、高度な生産管理が行われています。従来の植物工場においては、稼働率が安定しないという課題がありましたが、AIによって集められたビックデータによって、分析の精度はアップしています。
病害に感染するリスクを予測できるサービス
ドイツに本社があるボッシュによって開発されたサービスは、AIを活用する事で病害の予測ができるようになっています。ハウス栽培では温度や湿度、日射量などをセンサーで分析し、AIが解析してくれます。このサービスを利用する事で90%を超える高い精度で病害の感染リスクを予測できるとの事です。
農業にAIを導入した場合のメリットとデメリット
農業のAI化は作業の効率化など様々なメリットをもたらしますが、導入コストなどのデメリットもあります。
農業にAIを使うメリット
AIを農業に導入するメリットの一つとして挙げられるのが、農薬の散布量を調整できるという点です。AIを活用して害虫が発生している場所を細かく把握する事ができれば、必要以上に農薬を散布する必要がなくなります。農薬の散布は畑全体に行われるのが一般的と言われていますが、このやり方では必要のない場所にも農薬を散布する事になり、周辺の環境や人に影響を与える可能性があります。それに対しAIを活用すれば、人や環境への負担軽減に繋がる他、コストのカットというメリットも得られるのです。
また、収穫作業の効率化が期待できる点もAIのメリットと言えます。AIが搭載されているロボットを使って収穫作業を自動化すれば、作業の負担を大きく減らす事ができます。また、農作物の多くはある時期にまとめて収穫するため、収穫作業の時期はとても忙しくなります。AI搭載のロボットはそんな忙しい時期には、とてもありがたい労働者になる事でしょう。
さらに、AIを導入するメリットとしては、品種改良の作業が効率良く行えるという点です。一般的に品種改良は、多くの時間と労力を費やす必要がある作業と言えます。しかし、生物の遺伝子情報を解析できる「ゲノム解析」を活用する事で、品種改良の効率化が期待できます。AIを活用したゲノム解析によって、特定のタンパク質が植物の生育にどのように関わっているのかを把握する事ができます。AIを導入する事で新たな植物を効率良く作り出す事が可能となります。
農業にAIを使うデメリット
農業にAIを活用するデメリットとして挙げられるのが、導入コストが高い傾向にあるという点です。作業の効率化が期待できるAIですが、作業を自動で行ってくれるロボットといった機械を導入するには、それなりに高い費用がかかってしまうのが実情です。
また、AIは農業の分野では比較的新しい技術であるとも言えるため、どの程度の費用対効果があるのか判断しにくいという難点もあります。
さらに農業のAI化は様々なメリットをもたらしますが、高齢者の割合が多い農家の人たちにロボットなどの機械がすぐに扱えるわけではありません。AI機器に興味・関心がある人でも、機械を使いこなすためのサポートや支援は必要です。AIの技術を幅広い年齢層にしっかり教える事ができる人材の育成が求められています。
農業にAIを導入する場合の手順とは
農業分野でAIを導入する場合、まずはどのような目的でAIを活用するのか明確にしておく事が重要です。目的をハッキリさせておく事で、どの程度のコストが必要になってくのか分かりやすくなります。
次に行う手順としては、費用の調達になります。自治体の中には、AIを活用した農業を行う人を対象とした補助金や助成金の制度が設けられています。AI導入時に必要な費用の軽減や生産工程において新たに発生した経費のサポートなどの目的があります。補助金・助成金の有無や上限額などは忘れずに自治体に確認しておきましょう。
資金の調達にメドがついたら、ロボットやドローンといった機械の購入となります。これらの機械は金額に大きな幅があると言えるので、費用や畑の規模などを考慮しながら検討していくのが良いでしょう。
このようにAIの導入には適切な計画と準備が必要です。AI研究所の「AIプロジェクト推進サービス」ような専門的なサポートを利用すると、その導入をスムーズに進めることができます。
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農業分野でもAIの普及が進む可能性が高い
農業分野において、AIが活用されている事例は数多くあります。AIの導入は農業に様々なメリットを与えてくれるので、今後は農業でもAI技術の普及は進む事が予想されるでしょう。高齢化や人手不足などが課題であると言われている農業が、AIの導入によって抱えている課題を解消する事ができれば、人手不足などで苦しむ他業界にも良い影響を与えるかもしれません。
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