E資格は、日本ディープラーニング協会が実施する、ディープラーニングの理論を理解し適切に実装する能力を認定する国内最高難易度のAI資格です。本記事では、E資格の概要から受験要件、試験内容、難易度、合格率の推移、効果的な学習方法まで、E資格に関する情報を徹底的に解説します。
さらに、企業内でE資格をどのように活用し組織的なAI人材育成を進めるか、実践的なアプローチについても紹介します。E資格の取得を検討している方、企業のDX推進担当者の方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
E資格とはどんな資格なのか?

AI技術がビジネスや社会のあらゆる場面で活用される中、ディープラーニングを適切に実装できるエンジニアの育成が急務となっています。
E資格は、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力を有するエンジニアを認定する資格試験です。
AI人材としての技術力を客観的に証明できる重要な資格として、企業のDX推進や人材育成の指標として注目を集めています。
ディープラーニング技術者認定
E資格の正式名称は「JDLA Deep Learning for ENGINEER」で、ディープラーニングの実装能力を持つエンジニアの育成を目的として、2018年から年2回のペースで実施されています。
資格名称には実施年号が付与され(例:JDLA Deep Learning for ENGINEER 2025 #2)、技術の進歩に応じてシラバスが約2年に1度改訂される仕組みとなっています。
E資格の活用領域
E資格は、AIエンジニアやデータサイエンティストとしてのキャリア構築において重要な役割を果たします。ディープラーニングの理論と実装能力を証明することで、転職やキャリアアップの際に優位性を持つことができます。
また、製造業における品質管理の高度化、金融業界でのリスク分析、医療分野での画像診断支援など、多様な業界でディープラーニング技術の活用が進んでおり、E資格保有者への需要は高まり続けています。
企業内DX推進
E資格は、企業のDX推進における人材育成の重要な指標として活用されています。多くの企業では、E資格はテクノロジー専門家の育成において中心的な役割を担っています。
E資格認定プログラムを社内研修として実施している企業も現れており、組織的なAI人材育成の取り組みが広がっています。
E資格とG検定の違い
JDLAが実施する資格には、E資格のほかに「G検定」(JDLA Deep Learning for GENERAL)があります。G検定は、ディープラーニングの事業活用や方針決定ができるジェネラリスト向けの資格で、受験資格は不要で誰でも受験できます。
一方、E資格は、JDLA認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了していることが受験資格となります。G検定はAI従事者全般を対象とした初級~中級者向け、E資格は専門性の高いAI技術者・上級者向けという位置づけになります。
下記ではG検定試験について詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。
E資格の活用方法

E資格を企業内DX推進の実効性あるツールとして活用するには、組織全体の能力向上とプロジェクト推進に結びつける仕組みづくりが重要です。下記で詳しく見ていきましょう。
- 組織的なスキルマッピング
- 研修プログラムへの統合
- プロジェクトベースの実践機会創出
- 評価と報酬制度の連動
- 継続的学習とコミュニティ形成
①組織的なスキルマッピング
E資格を活用した組織的なスキルマッピングは、社内のAI人材を可視化し、適材適所の配置を実現するための基盤となります。E資格保有者のスキルレベルや専門分野(画像認識、自然言語処理、時系列解析など)を体系的に整理することで、プロジェクトに最適な人材を確保できるようになります。
②研修プログラムへの統合
E資格認定プログラムを企業の研修体系に組み込むことで、計画的かつ効率的なAI人材育成が実現できます。ディープラーニングの基礎から応用まで体系的に学習できる内容となっているため、社内研修として導入する企業が増えています。
③プロジェクトベースの実践機会創出
企業でE資格を活用するためには、習得した知識を実務で活用できる機会を意図的に作ることが大切です。社内のAI活用プロジェクトにE資格保有者を積極的に配置し、実際の運用や構築経験を積ませることも重要です。
また、複数のE資格保有者がチームを組んで取り組むプロジェクトでは、知識の共有や相互学習が自然に促進され、組織全体の技術力向上につながります。
④評価と報酬制度の連動
E資格取得を人事評価や報酬制度と連動させることで、社員のモチベーションを高め、自律的な学習を促進できます。資格取得時の一時金支給や、資格手当の継続的な支給など、金銭的インセンティブを設定する企業が増えています。
評価制度においては、資格取得そのものだけでなく、取得後の実務への貢献度も含めて総合的に評価する仕組みが効果的です。
⑤継続的学習とコミュニティ形成
ディープラーニング技術は日々で進化しているため、E資格取得後も継続的に学習する環境を整備することが重要です。
社内勉強会や論文読解会、最新技術のキャッチアップセッションなどを定期的に開催し、E資格保有者同士が知識を共有し合える場を提供すると効果的です。
E資格の受験要件

E資格は、明確な受験資格と手続きが定められています。ここでは、受験資格や受験の流れなどを解説します。
- 受験資格の詳細
- 申込~受験の流れ
①受験資格の詳細
E資格の受験資格は「JDLA認定プログラムのいずれかを試験日の過去2年以内に修了していること」です。認定プログラムを修了していない場合は受験申込自体ができません。
JDLA認定プログラム修了要件
JDLA認定プログラムとは、JDLAが定めるシラバスの内容を網羅し、E資格の受験に必要な知識とスキルを習得できる教育プログラムとして認定されたものです。民間企業や大学院など複数の事業者が提供しており、受講形式、期間、価格などが事業者によって異なります。
修了要件を満たすと、認定プログラム事業者から「修了証」と「修了者ナンバー」が発行されます。修了者ナンバーは、E資格の受験申込時に必須です。
有効期限と再受験
JDLA認定プログラムの修了証は、修了日から2年間が有効期限となっています。修了日から2年以内にE資格試験を受験しなければ、受験資格を失うことになります。
E資格試験に不合格となった場合でも、修了証の有効期限内であれば、認定プログラムを再受講することなく次回以降の試験に再チャレンジできます。
E資格は年2回(2月と8月)実施されるため、1度の認定プログラム修了で3~4回の受験機会があります。計画的に学習を進め、有効期限内に合格を目指すことが重要です。
[custom_eshikaku_shortcode]②申込~受験の流れ
E資格の受験には、認定プログラムの修了後、試験申込、試験当日の受験という3つのステップがあります。各ステップで必要な手続きや注意点を理解しておくと、スムーズに受験を進めることができます。
申込期間・方法
E資格の受験申込は、各回の試験日の約2~3ヶ月前から受験日前日23:59まで受け付けています。申込はJDLAの公式サイトから行い、認定プログラムの「修了者ナンバー」と「認定プログラム修了日」の入力が必須です。
受験料は、一般33,000円(税込)、学生22,000円(税込)、JDLA協会会員27,500円(税込)となっています。
試験会場
E資格はCBT方式で実施され、全国の指定試験会場から、申込時に受験者が自由に選択できます。試験会場は、ピアソンVUEが運営するテストセンターネットワークを利用しています。
試験会場の選択は先着順となるため、希望する会場や日時がある場合は早めに申し込みましょう。特に都市部の人気会場は予約が埋まりやすいため、認定プログラム修了後は速やかに受験申込を行うことが重要です。
試験当日の注意点
試験当日は、受付手続きのため試験開始時間の15分前までには会場に到着する必要があります。遅刻した場合は受験が認められず、受験料の返金もされません。
また、試験室内への私物の持ち込みは一切禁止されており、スマートフォン、財布、腕時計、筆記用具なども持ち込めません。
E資格の試験内容と難易度

E資格の出題範囲は、JDLAが公開するシラバスに基づいており、5つの大項目から構成されています。試験範囲の全体像や難易度を詳しく見ていきましょう。
- 出題範囲
- 最難関領域はどこか
出題範囲
各項目の内容と特徴を理解することで、効率的な学習計画を立てることができます。
- 数学的基礎
- 機械学習
- 深層学習の基礎・応用
- 開発・運用環境
①数学的基礎
数学的基礎は、ディープラーニングを理解するための土台となる分野で、線形代数、確率・統計、情報理論の3つの中項目に分かれています。
線形代数では、、スカラー、ベクトル、行列、テンソルの基本概念から、特異値分解、固有値・固有ベクトルなどの応用的な内容まで含まれます。
確率・統計では、ベルヌーイ分布、マルチヌーイ分布、ガウス分布という3つの確率分布の理解と、ベイズ則の応用対策が重要です。情報理論では、情報量の定義、情報エントロピー、相対エントロピーなどが出題されます。
②機械学習
機械学習は、ディープラーニングの基盤となる技術で、教師あり学習、教師なし学習、強化学習の基本概念が問われます。
教師あり学習では、回帰や分類の手法、評価指標が出題されます。教師なし学習では、クラスタリングや次元削減の手法が含まれます。また、過学習やバイアス・バリアンストレードオフなど、機械学習全般に共通する重要な概念の理解も求められます。
③深層学習の基礎・応用
深層学習の基礎では、順伝播型ネットワーク、深層モデルのための最適化、深層モデルのための正則化、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)などが出題されます。
深層学習の応用では、画像認識、物体検出、セマンティックセグメンテーション、自然言語処理、生成モデル、深層学習の説明性などが含まれます。
下記では、ニューラルネットワークについて詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
④開発・運用環境
開発・運用環境は、実際のAI開発プロジェクトにおける実装やインフラに関する知識を問う分野です。エッジコンピューティングでは、スマートフォンなどリソースが限られたデバイスでAIを動作させるための軽量化技術が出題されます。
分散処理では、大規模なAI開発における学習時間短縮のための手法(モデル並列、データ並列)が問われます。環境構築では、仮想化環境や深層学習ライブラリの知識が求められます。
最難関領域はどこか
E資格の試験範囲の中でも、特に難易度が高いとされる領域があります。これらの領域を重点的に学習すると、合格可能性を高めることができます。
- Transformerと生成モデル
- 深層強化学習
①Transformerと生成モデル
Transformerは、自然言語処理を中心の技術で、近年は画像認識など他の分野にも応用が広がっています。E資格では、Self-attentionメカニズム、Scaled Dot-Product Attention、Positional Encodingなどの詳細な仕組みが問われます。
生成モデルでは、VAE、GAN、Diffusion Modelなどの仕組みと応用が出題されます。画像生成、音声合成、データ拡張などに活用されており、実装の際には訓練の安定化や品質向上のための工夫が必要です。
②深層強化学習
E資格での深層強化学習は、行動価値関数、方策勾配法、Q学習、DQN(Deep Q-Network)などの概念が出題されます。
教師あり学習や教師なし学習とは異なり、報酬設計や探索と活用のバランスなど、独特の考え方が必要なので難易度の高い項目です。
E資格の合格率・統計データ

E資格の合格率や受験者数の推移を分析することで、試験の難易度や人気の動向を把握できます。また、自身の学習計画を立てる際の参考にもなります。
合格率の推移と分析
E資格は2018年の初回試験以降、年2回のペースで実施されており、受験者数・合格者数ともに増加傾向にあります。以下の表は、各回の試験結果をまとめたものです。
| 開催回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 2018 | 337 | 234 | 69.44% |
| 2019 #1 | 387 | 245 | 63.31% |
| 2019 #2 | 696 | 472 | 67.82% |
| 2020 #1 | 1,042 | 709 | 68.04% |
| 2021 #1 | 1,688 | 1,324 | 78.44% |
| 2021 #2 | 1,170 | 872 | 74.53% |
| 2022 #1 | 1,327 | 982 | 74.00% |
| 2022 #2 | 897 | 644 | 71.79% |
| 2023 #1 | 1,112 | 807 | 72.57% |
| 2023 #2 | 1,065 | 729 | 68.45% |
| 2024 #1 | 1,194 | 867 | 72.61% |
| 2024 #2 | 906 | 600 | 66.23% |
| 2025 #1 | 1,043 | 712 | 68.26% |
| 2025 #2 | 1,039 | 730 | 70.26% |
参考:「2025年 第2回 E資格(エンジニア資格)」結果発表・シラバス改定・2026年開催スケジュールのお知らせ
合格率は平均すると約70%前後となっています。2025年8月に実施されたE資格の合格者のうち、約3.5人に1人がE資格対策ディープラーニング短期集中講座の受講生となっています。
この講座は、最短でE資格合格を目指すためのJDLA認定プログラムで、修了率99.2%、合格率83%以上を誇る効果的なプログラムとなっています。体系的なカリキュラムと実践的な学習内容により、多くの受講生が短期間で合格レベルに到達しています。
E資格の学習計画と勉強期間
E資格の合格には、体系的な学習計画と十分な勉強時間の確保が大切です。ここでは、学習計画や時間について見ていきましょう。
- 学習時間と期間
- 効果的な学習方法
①学習時間と期間
AI初心者の場合、数学の基礎から機械学習、ディープラーニングまで学ぶ必要があるため、300時間程度の学習時間が必要です。
一方、AI経験者や現役AIエンジニアの場合、100時間~150時間程度で合格レベルに到達できる可能性があります。そのため、試験日から逆算して、余裕を持った学習計画を立てることが重要です。
②効果的な学習方法
E資格の合格には、JDLA認定プログラムの活用と自習リソースの組み合わせが効果的です。
JDLA認定プログラム活用法
JDLA認定プログラムは、E資格の受験資格を得るだけでなく、体系的にディープラーニングの知識が習得できます。
E資格対策ディープラーニング短期集中講座では、短期間で受験資格を取得できる効率的なプログラムです。オリジナルテキスト教材とプロの講師による分かりやすい解説があるので、初心者でも安心して知識を身につけることが可能です。
自習リソースと参考書
E資格に出題される内容は、JDLA認定プログラムと並行して、参考書や問題集を活用すると、理解を深めることができます。
JDLAが推薦する図書や、最新の技術ブログ、論文なども活用すると、より深い理解を得ることが可能です。
また、YouTubeの技術解説動画、技術記事などもおすすめです。実際に手を動かしてコードを書き、モデルを構築する経験を積むことで、実装力が養われます。
E資格を学ぶならE資格短期集中講座
E資格対策ディープラーニング短期集中講座では、JDLA認定プログラムとして、多くの合格者を出している信頼性の高い講座です。
AIや応用数学、Python基礎、ディープラーニングの理論などが体系的に学べます。受講形式も豊富なので、自分のスケジュールに合わせて学習可能です。
| セミナー名 | E資格対策ディープラーニング短期集中講座 |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 54,780円〜 |
| 開催期間 | 4日間 |
| 受講形式 | 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング |
| JDLA認定プログラム修了報告期限 | 2026年2月4日(水)23:59まで |
E資格についてのまとめ
E資格は、日本ディープラーニング協会が実施する、ディープラーニングの理論を理解し実装する能力を認定する資格です。試験は年2回実施され、120分間で約100問の多肢選択式問題に解答するCBT形式です。E資格を取得して、AIに強い人材を育てましょう。