IT技術の発展が目覚ましい現代において、ビジネスの世界では各企業がDXプロジェクトの推進に取り組んでいます。
様々なメリットが期待出来るDXプロジェクトですが、その一方でデメリットも共存しているため実施にあたっては注意が必要です。
本稿ではDXプロジェクトの成功イメージを描くための事例をいくつか紹介した上で、メリット・デメリットについてもそれぞれ紹介していきます。
DXプロジェクトの概要
ビジネス界のトレンドとして注目度が上がっているDXですが、その実態についてまだ詳しく知らないという人も多いでしょう。
まず始めに、DXについての予備知識を以下に解説します。
DXプロジェクトとはどのようなものか
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、広義ではデジタル技術や情報技術を利用して人々の生活をより良い方向へ変革させていく取り組みのことです。
スウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって2004年に提唱された概念であり、日本では2018年に経済産業省が「DX推進ガイドライン」を公表したことで注目されるようになりました。
ビジネス分野にフォーカスすると、既存の業務システム・ビジネスモデル・製品やサービスの品質をデジタルの力で変革させることを指します。
DXを推進するために会社全体で行う取り組みを一般的にDXプロジェクトと呼ぶので覚えておきましょう。
DXプロジェクトの結果、組織や企業全体の風土が変化することも珍しくありません。
ビジネスシーンでDXが重要視される理由とは
ビジネスにおいてDXが重要視されている理由としては、まず「社会全体のIT化」が挙げられます。
2000年代に入ってからインターネットテクノロジーやデバイスの普及が急速に進み、デジタル技術が市民生活に大きな変化をもたらしました。
例えばちょっとした情報をすぐに検索エンジンで調べたり、インターネットを介した通販の利用などはその典型例として知られています。
消費者が商品やサービスを購入するまでに至る行動パターンが変化したため、従来のビジネスモデルやマーケティングでは対応しきれない場面も増えました。
そのため、社会全体のIT化に適応するためにDXプロジェクトによるビジネスの変革が求められているのです。
また、2025年を目安に既存の基幹システムの過半数がサポートを終了すると明言しています。
業務遂行の安全性や効率という観点からも、DXプロジェクトは各企業にとって急務となっていると言えるでしょう。
DXプロジェクトの成功事例5選
DXプロジェクトは既に国内の様々な企業で成功事例が報告されているため、これから自社の変革に取り組む経営者にとって有用な参考資料になり得ます。
以下では比較的有名なDXプロジェクトの成功事例を5つ見てみましょう。
DXプロジェクトの成功事例1.日本交通株式会社
タクシー業界の大手日本交通株式会社では、車両配置の適正化を目的としたAI配車システムを導入しています。
タクシーはシーズンやエリアによって需要の変動が大きく、手配する車両の過不足によって稼働率がまばらになるという課題を抱えていました。
同社が導入したシステムではその日の交通状況・近隣イベント・天候など様々なデータを分析し、適切な車両配置を行うことで車両稼働率の安定化に成功したのです。
DXプロジェクトの成功事例2.ソニー損害保険株式会社
自動車保険を提供するソニー損害保険株式会社では、運転手の事故リスクに応じてキャッシュバックを行うという斬新なプランが用意されています。
このプランのキーポイントとなっているのが、運転手のスマホにインストールされるアプリ「GOOD DRIVE」です。
GOOD DRIVEでは各種センサーによって車体の加速・減速・ハンドルの切り具合などを計測し、AIによって安全運転のスキルがスコアリングされます。
一定条件をクリアすると保険料の一部がキャッシュバックされる仕組みとなっており、スコアの結果を見直すことで運転手の安全運転への意識も高まる結果となりました。
DXプロジェクトの成功事例3.株式会社ファミリーマート
コンビニ大手の株式会社ファミリーマートは業界に先駆けて無人決済システムを実用化しました。
以前からセルフレジの導入などで業務効率化を図っていたコンビニ業界ですが、ファミリーマートが導入した無人決済システムでは天井にある無数のカメラと棚に配置されたセンサーによって商品を管理します。
利用客は任意の商品を指定エリアに持ち込み決済を行いますが、カウンター商品など一部を除いてバーコードの読み取りが必要ありません。
その結果、人件費の削減や万引き率の低下など経営において多くのメリットを生み出すこととなりました。
DXプロジェクトの成功事例4.日本郵政株式会社
慢性的なドライバー不足に悩む運送業界ですが、日本郵政株式会社はドローン配達による業務効率化を推進しています。
本格導入に先駆けてドローンの配送エリアに選定されたのは、通常の車両配送では時間がかかっていた山間部や離島などです。
ドローンは自立飛行型となっているため人力による操作が必要なく、配達から帰還まで自動的に行われます。
運送コストや運転手の負担が大きかったエリアへの配送が自動化されたことで、社内リソースの最適化と配送時間の短縮が実現しました。
DXプロジェクトの成功事例5.株式会社長谷工コーポレーション
マンションの施工や運営全般を請け負う株式会社長谷工コーポレーションは、分譲マンションの購入希望者をターゲットとした新規顧客獲得を効率化させるアプリを活用しています。
従来の手法では営業マン1人に対して顧客1組というスタイルで物件を紹介していましたが、アプリでは簡単な質問に答えるだけで条件にマッチする物件候補が提示される仕組みです。
気になった物件があれば、そのまま非対面式のモデルルーム見学を予約することが出来ます。
マンション選びの条件に迷っている、あるいは忙しくて不動産屋に足を運ぶ暇がないといった顧客のニーズを満たすサービスとして好評を博しました。
もちろん、営業担当者の負担軽減にも繋がっているため社内の業務効率化も実現しています。
DXプロジェクトに期待されるメリットとデメリット
DXプロジェクトを成功させるためには、「何のために取り組んでいるのか」「どんなことに注意すべきなのか」を理解しておくことが大切です。
次に紹介するメリット・デメリットをしっかり把握した上で、DXプロジェクトに着手しましょう。
メリット1.生産性向上
DXプロジェクトが成功すると今まで人力で手間隙をかけていた業務を自動化することが出来ます。
従業員の負担軽減に繋がればコア業務に集中出来る環境が整うため、全体的なパフォーマンスや生産性の向上に繋がるのです。
無駄の少ない効率的な仕事は結果として様々な面でコストやリソースを抑えることになり、社内全体での働き方改革実現にも効果が期待されています。
メリット2.新しいビジネスモデルの創出
DXプロジェクトは単なる業務のデジタル化ではなく、製品・サービス・業務プロセスの価値や在り方を変革させることが目的です。
したがって、DXによって変化した環境から新しいビジネスモデルや商品のアイディアが出やすくなります。
どのような業界でも、新しい切り口からのサービスは競合他社との差別化に繋がり市場優位性を確保するのに有効です。
メリット3.市場ニーズへの追従性向上
DXプロジェクトによって構築されたシステムでは消費者行動の様々なデータを活用してマーケティングを行えるようになります。
どんなに革新的な商品やサービスを開発しても、それが市場のニーズにマッチしていなければ売上を伸ばすことは難しいでしょう。
IT化が進んで消費者動向の移り変わりも激しくなっている現代ビジネスシーンでは、DXプロジェクトが企業の生存戦略を大きく左右します。
デメリット1.中長期的な取り組みが求められる
DXプロジェクトは基本的に即効性のある取り組みではないという点には十分注意しておきましょう。
デジタルシステムの構築や従業員への研修には相応の期間を要します。
システムを本格的に運用し始めてからも社内の変化を実感したり、ビジネスに新しい価値を生み出したりするまでには時間がかかるのが一般的です。
少なくともシステムの導入から3年前後は経過を見守り、効果的に運用するための施策を考えることにも注力しましょう。
根気強く取り組むことがDXプロジェクト成功のカギです。
デメリット2.既存システムからの脱却
社内で大規模な既存システムを構築していると、場合によっては新しいシステムとの入れ替えに苦労することがあります。
長年使用しているシステムは管理者不在のブラックボックスになっていることが多く、引継ぎが難航するケースも珍しくありません。
社員が使い慣れた業務システムを刷新することになるため、事前に入念な周知を行い理解を得てから着手するようにしましょう。
DXプロジェクトで導入されるシステムには既存システムと連携出来るものもあるので、ケースバイケースで有効活用するのもおすすめです。
なお、DXプロジェクトにおいて既存システムのことは「レガシーシステム」と呼ぶのが一般的なので併せて覚えておきましょう。
成功事例を参考に自社のDXプロジェクトを成功させよう
業態や業界を問わず、もはやDXプロジェクトは企業が生き残るための通過儀礼になっていると言っても過言ではありません。
想定外のトラブルを防ぐためには、メリットやデメリットを把握した上で社内全体の取り組み・協力が重要です。
先人たちの成功事例でイメージを掴みながら、DXプロジェクトを成功に導いてください。
DXプロジェクトを成功させるには、DX人材育成サービスを利用することが効率的といえるでしょう。
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